ジョアル語(読み)ジョアルご(その他表記)parler joual

改訂新版 世界大百科事典 「ジョアル語」の意味・わかりやすい解説

ジョアル語 (ジョアルご)
parler joual

フランス語の一方言。16世紀半ばに〈新フランス〉として成立した,北アメリカ大陸東岸のフランス植民地(最盛期には現在のカナダのケベック州と東部沿海諸州を含んでいた)に入植したフランス人が,特に18世紀後半から本国フランスとの接触を絶たれた状況で2世紀近く話し続けている間に,かなり独自の言語学的特徴をそなえるにいたった言語をいう。標準フランス語に比べて,名詞形容詞の性・数一致が厳密でなかったり,動詞の語尾変化も単純化されている。発音もフランス語のoi[wa]が[we]に発音され,[a]音や語尾母音を一般に引っ張る傾向があり,ちょっと聞いては標準フランス語に慣れた耳にはまったく聞きとれない。こうした特徴は元来あまり教養のない農民・漁民入植者(アビタンと呼ばれた)や都市下層民が崩れたフランス語を使っているうちにでき上がったもので,〈ジョアル語〉といえばフランス系カナダ貧民のシンボルのように嘲笑の対象となっていた。しかし近年ケベック州独立運動が高まり,少数民族の文化再評価の気運が世界的に広がったことも手伝って,ジョアル語を文学語にまで高めようとする運動がケベックの知識人の間で行われ,作品も書かれている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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