日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケベック」の意味・わかりやすい解説
ケベック
けべっく
Québec
カナダ東部の州。面積135万5743.08平方キロメートルはカナダ10州中最大、人口723万7479(2001)はオンタリオ州に次ぎ第2位である。州都ケベック。住民の約74%がフランス系で、イギリス系は4.1%にすぎない。大陸性気候で、1月の平均気温は零下10℃、7月は11~21℃である。自然地理的には、セント・ローレンス低地、アパラチア高地、カナダ楯状地(たてじょうち)の三つに区分される。
セント・ローレンス低地は、ケベック市を頂点とし、南西方向に延びている。面積は州全体の2%にも達しないが、モントリオールなどの大都市があり、州人口の50%以上を占める。この地域は、五大湖地方と大西洋を結ぶ交通路のため、古くから重要な地域であった。アパラチア地域は、州南東部のアパラチア山脈の延長で、緩やかな丘陵地帯を形成している。また、セッドフォードには世界最大級のアスベスト鉱山がある。混合樹林帯でカエデが多く、カエデの樹液を煮つめたメープル・シュガーはこの地域の特産物として有名である。混合農業を主とし、酪農も行われている。小規模水力発電を利用した製材、製粉、木材加工などの産業もある。カナダ楯状地は、先カンブリア時代の岩石からなり、州面積の80%以上を占めている。無数の氷河湖が点在し、針葉樹林帯で、カナダ経済林の3分の1を占める。地下資源も豊富で、西部には金、銀、銅などの鉱山が、ラブラドルの州境には鉄鉱床があり、この鉄鉱石はセント・ローレンス水路で五大湖周辺の工業地帯に送られている。近年ジェームズ湾に注ぐイーストメーン川流域に大ダム群を建設するなど、水力発電が重要産業となっている。その安価な水力発電を利用したアルミニウム精錬業も世界的に有名である。
[山下脩二]
ケベック(市)
けべっく
Québec
カナダ、ケベック州の州都。人口16万9076、大都市域人口68万2757(2001)。セント・ローレンス川下流の北岸に位置し、先住民(インディアン)のことばで「川の狭くなったところ」を意味する。市の中心部は標高100メートルのダイヤモンド岬上にあり、北アメリカ大陸に残る唯一の城壁都市である。商・工業地区、住宅地区などは低地にある。1608年にフランスの植民地としてシャンプランが開拓して以来フランス系文化の中心地で、現在でも市民の92%はフランス系である。1663年にフランスの植民地ニュー・フランスの首都となり、1791年ロワー・カナダの首都となった。1841~67年はカナダの首都であった。大西洋横断の巨船が出入する良港をもち、穀物、木材、家畜が輸出される。鉄道の起点でもあり、五大湖地方とは水路で直結され、近代都市として発達している。道幅が狭く、ヨーロッパ都市を思わせる古風な町並みは観光地としても有名で、イギリス・フランス植民地戦争の主戦場であったため、歴史的遺跡も多い。1985年にケベックの歴史地区は世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。1647年建設の教会堂、1823~32年建設の城塞(じょうさい)、フロンテナック城(現在はホテル)などが知られている。1852年創立のラバル大学はカトリック系大学として名高く、フランス語が用いられている。
[山下脩二]