日本大百科全書(ニッポニカ) 「スキュデリ嬢」の意味・わかりやすい解説
スキュデリ嬢
すきゅでりじょう
Madeleine de Scudéry
(1607―1701)
フランスの小説家。ル・アーブルに生まれる。劇作家、文人として活躍したジョルジュ・ド・スキュデリGeorges de Scudéry(1601―1667)の妹。兄に従いパリのサロンに出入りし、のち自邸にもサロンを開き、そこでの会話、論議を小説に写し取って、非常にもてはやされた。独特の語法、恋愛談義などにより「プレシューズ」précieuse(才女)とよばれる風潮のもとになり、のちに古典派のボアローにからかわれた。しかし彼女以来、心理分析が小説の主たる要素となったこと、その直接の影響下に、セビニェ夫人、ラファイエット夫人らが文才を発揮しえたなど、その及ぼした影響は大きい。作品に、ランブイエ侯爵夫人のサロンを写した『大シリュス』Le Grand Cyrus10巻(1649~1653)、精緻(せいち)な恋愛談義で名高い『クレリ』Clélie10巻(1654~1660)がある。
[福井芳男]