改訂新版 世界大百科事典 「スシュルタサンヒター」の意味・わかりやすい解説
スシュルタ・サンヒター
Suśruta-saṃhitā
インド二大古典医学書の一つ。書物としての成立は後3~4世紀であるが,その背景にある医学派の歴史はきわめて古く,前数世紀にまでさかのぼることができる。カーシー(現,ワーラーナシー)地方の王ダンバンタリDhanvantariが弟子のスシュルタに教えを授けるという構成になっているが,いずれも伝説的人物であり,歴史的年代を定めることはできない。もう一つの古典医学書《チャラカ・サンヒター》が徹底して内科的治療を説くのに対し,《スシュルタ・サンヒター》には外科的治療法が詳しく語られている。おそらく戦場における外傷の治療が発展したものであり,ダンバンタリ王に代表されるクシャトリヤ層を社会背景としていたと思われる。
→インド医学
執筆者:矢野 道雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報