内科学 第10版 「ストレス赤血球増加症」の解説
ストレス赤血球増加症(ストレス多血症、Gaisböck症候群)(相対的赤血球増加症)
概念
本疾患は慢性に経過する相対的赤血球増加症の1つで,真性赤血球増加症との鑑別が重要な疾患である.
病態生理
病態の詳細は不明だが,正常上限の赤血球数と正常下限の血漿量の組み合わせが偶然起こったのではないかと考えられている.赤ら顔で肥満型が多く,血圧が高く,中年男性に多い.多くは喫煙者で,アルコール多飲者も多い.
臨床症状・検査成績
血流のうっ滞による頭重感,頭痛,めまいなどをしばしば訴える.白血球や血小板の増加を認めないことや,脾腫を認めないことで,真性赤血球増加症と鑑別できる.二次性赤血球増加症との鑑別には血清エリスロポエチン(EPO)測定が重要で,二次性では高値を示し,本疾患では正常範囲を示す.JAK2チロシンキナーゼの遺伝子変異は真性赤血球増加症のほとんどの症例にみられるが,ストレス赤血球増加症や二次性赤血球増加症ではみられない【⇨表14-9-19】.
治療・予後
心血管系の合併症が多いことから,高血圧症,脂質異常症,高尿酸血症などに対する治療を中心に,禁煙,節酒,減量に努めるよう指導する.真性赤血球増加症に移行することはなく,心血管系疾患の合併が予後を左右する.抗腫瘍薬による化学療法は禁忌である.[小松則夫]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報