日本大百科全書(ニッポニカ) 「セキュリティチップ」の意味・わかりやすい解説
セキュリティチップ
せきゅりてぃちっぷ
Trusted Platform Module
Security Chip
Fritz Chip
パソコン内の機密情報(データ)の漏洩(ろうえい)・改竄(かいざん)を防ぐ目的の半導体素子。情報漏洩で深刻な被害のでる法人向けパソコンに搭載されており、暗号化された機密情報を解く「暗号鍵」を格納している。通常のパソコンでは、暗号化された機密情報とその暗号を解く暗号鍵は、両方ともハードディスクや中央処理装置(CPU)に記憶されており、ハードディスクなどが抜き取られて盗まれた場合、機密情報が漏洩するおそれがある。セキュリティチップを搭載したパソコンでは、かりにハードディスクなどが抜き取られて他のパソコンにつながれても、暗号鍵を収めたチップがないため、機密情報を読みとることがむずかしくなる。国際的な業界組織TCG(Trusted Computing Group)が標準規格を制定しており、2000年ごろから企業向けパソコンに搭載されるようになった。通常の半導体素子は分解して内部を解析すれば情報が読めてしまうが、セキュリティチップは特殊技術を駆使することで、暗号鍵を読み取ろうとしても物理的に破損するなどして、情報を読み取りにくくしている。なおアメリカでは、コンピュータなどの情報保護法制の整備を主導した上院議員ホリングスErnest Frederick Hollings(1922―2019)の愛称フリッツFritzにちなみ、フリッツチップとよばれる。
[矢野 武 2019年4月16日]