チップ(読み)ちっぷ(英語表記)chip

翻訳|chip

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チップ」の意味・わかりやすい解説

チップ
ちっぷ
chip

小片。一般に木材を小片にした木材チップを意味する。縦約3センチメートル、横約4センチメートル、厚さ約0.4センチメートルの木片に刻んだもので、おもにパルプ原料として、一部は繊維板の原料として消費される。

 木材は蒸解(煮てパルプ化すること)する際に蒸解薬液を用いるが、丸太のままでは薬液の浸透が悪いのでチップ状にする。したがって密度が小さく液の浸透が比較的容易な針葉樹チップは大きく、密度が高く浸透の悪い広葉樹のチップはかなり小さめに製造される。

 チップそれ自体は、かつてパルプ工場および繊維板工場のなかで剥皮(はくひ)した丸太からチッパー(チップ製造機)を用いて製造され消費されていた。日本では1955年(昭和30)ごろから木材資源の不足から丸太が入手困難となり、廃材薪炭(しんたん)材がパルプ工場の外でチップ化されるようになり、1964年、日本のチップ専用船が北米から木材チップの輸送を開始するに及んで、チップは国際商品として流通するようになった。

 2014年(平成26)に日本でパルプ生産に利用されたチップは2925万7000立方メートルであるが、そのうち国産チップは926万6000立方メートル(針葉樹材719万9000立方メートル、広葉樹材206万7000立方メートル)、輸入チップは1999万1000立方メートル(針葉樹材360万1000立方メートル、広葉樹材1639万立方メートル)となっている。日本は国土の約3分の2が森林でありながら、山が急峻(きゅうしゅん)なため伐採搬出に費用がかかるので、安い輸入材に頼る割合が多い。パルプ生産用チップは、総計上は国産原料が31.7%、輸入原料68.3%となっているが、国産の廃材チップも多くは輸入廃材を原料としていると考えられるため、日本のパルプ工業の原料はほとんど外材に依存しているといえよう。

[御田昭雄 2016年4月18日]

『日本製紙連合会編・刊『森林はパートナー』(2000)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チップ」の意味・わかりやすい解説

チップ
chip

チッパーで製造する木材の小片で,化学パルプ製造用やファイバー・ボード原料として木釜に使用する。パルプ用材からだけでなく,製材時の廃材からの生産も多く,日本のパルプ用材は9割以上をチップ材が占めており,原木の利用は1割にも満たない。パルプ用材樹種も従来軟材の針葉樹が多く使われていたが,近年は広葉樹の割合が高くなってきている。なお下級古紙を原料とする板紙をさす言葉として用いられることもある。

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