改訂新版 世界大百科事典 「センウセルト1世」の意味・わかりやすい解説
センウセルト[1世]
Senusert Ⅰ
古代エジプト第12王朝2代目の王。在位,前1971年ころ-前1928年ころ。王朝の始祖アメンエムハト1世の子。父王との10年の共治の後リビア遠征中に父王が暗殺されるが,機敏な行動で事態を収拾し,巧みな政治力で王朝の基礎を固めた。新たに発見された金鉱の確保を目ざしてナイル川第2急湍(きゆうたん)までの下ヌビアを征服,ブヘンに要塞を築いて南境を防衛し,シリアとの交易を復活した。ヘリオポリス,カルナック,ファイユームなど国内各地に神殿を建造したが,採石のための遠征隊をシナイ半島,アスワン,東部砂漠に送った。とくに治世第38年のワーディー・ハンマーマート遠征隊には,リシュトのピラミッドの葬祭殿に納置される王像60体,スフィンクス150体の材料調達のため1万7000人が参加している。治世最後の3年は子のアメンエムハト2世を共治王に任命し,王位継承を確保した。第12王朝の国家事業であるファイユームの干拓もおそらく王が着手したとみられる。
執筆者:屋形 禎亮
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報