要塞(読み)ヨウサイ(英語表記)fortress

翻訳|fortress

デジタル大辞泉 「要塞」の意味・読み・例文・類語

よう‐さい〔エウ‐〕【要塞】

国防上の要所につくった軍事的防備施設。監視所や砲台などを備える。
[類語]防塞堡塁土塁防塁本塁孤塁堅塁城塞バリケード

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精選版 日本国語大辞典 「要塞」の意味・読み・例文・類語

よう‐さいエウ‥【要塞】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 国境などで、攻守に好都合の地に設けられたとりで。
    1. [初出の実例]「隙を窺て斉境に侵入し、各地の要砦を抜て以て大軍進入の路を作るべしと」(出典:経国美談(1883‐84)〈矢野龍渓〉後)
    2. [その他の文献]〔礼記‐月令〕
  3. 国防上重要な場所に設けられた軍事的な防備施設。〔五国対照兵語字書(1881)〕
    1. [初出の実例]「私は彼自身の手から、彼の保管してゐる要塞(エウサイ)地図を受取って」(出典:こゝろ(1914)〈夏目漱石〉下)

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改訂新版 世界大百科事典 「要塞」の意味・わかりやすい解説

要塞 (ようさい)
fortress

一国の戦略要点や国境の要部等において敵軍を阻止し,自軍の動員・集中等を掩護(えんご)し,あわせて軍需品の集積,住民の保護などの目的をもって,平時から堅固に建設した永久築城施設をいう(築城とは軍用の工事,各種構築物を総称した言葉)。その所在地により,陸地要塞と海岸要塞に分けられる。

要塞は火砲の発達とともに主としてヨーロッパにおいて17~18世紀ごろから発達し,第1次世界大戦前にその極致に達した。そのころの陸地要塞は,前進陣地帯,本防御線,内部防御線,囲郭と呼ばれるものから成るほぼ円形の配備をなし,砲台を中心として,コンクリート,石材,鉄板などにより堅固に構築された。戦時には野戦軍と協力して,国境等の防御線の中核となり,攻勢作戦にあたっては野戦軍の攻撃の足がかりや補給基地として,また退却に際しては敵軍の阻止・分断等の戦略・戦術的役割を果たした(フランスのベルダン要塞,メッス要塞等)。

 第1次世界大戦後は,戦車,航空機,火力の発達により,円形の要塞は敵の集中火力をうけて破壊され,また要塞と要塞の間隙(かんげき)を戦車で容易に突破されるようになったところから,特火点(一般にトーチカともいう)と呼ばれる小型のコンクリート製の機関銃座や砲座等を疎散に配置し,これらを地下道で結んだ一連の永久陣地帯を数線に構築し,国境地帯の要部を全面的にカバーする方式に変わってきた。堅い〈点〉としての要塞は,縦深・横広の〈線〉としての永久陣地帯へと変ぼうしたのである。狭義の要塞は第1次世界大戦までのものをいうが,その後の永久陣地帯をも要塞と呼びならわしている(フランスのマジノ線,ナチス・ドイツのジークフリート線等)。

 要塞に具備する要件は,(1)敵の機動を制する障害物,(2)自軍の火力,人員,物資等を掩護する施設,(3)敵の動きをとらえ,自軍の射撃を正確にするための視察・観測設備,(4)自軍の陣内の交通・通信施設,(5)敵に見つからぬようにするための遮蔽・偽装,(6)守兵の生活に必要な諸設備,(7)軍需品の貯蔵設備等である。現代ではそのほか,防空,対毒ガス,放射能防護の諸設備なども必要となる。

国防上重要な海峡,海軍基地,政治・経済の中心都市等を防護し,敵艦隊の行動を制し味方の艦隊の作戦を助けるため,海岸,離島などの要地に作られる永久砲台を中心にした施設をいう(イギリスのジブラルタル要塞,第2次世界大戦前のシンガポール要塞等)。

 海岸要塞に具備する要件は,陸地要塞とほぼ同様で,対艦船用の海岸重砲の砲台を中心に,水中・水上の障害物,対潜水艦防護施設,観測・防空・貯蔵・居住諸設備等から成る。

 太平洋戦争前,日本が保有した要塞は主として海岸要塞であり,陸軍が担任して重砲兵連隊を配し,海軍と協同して防護にあたった。終戦時の要塞は,東京湾・由良,豊予,下関,長崎,壱岐,対馬,舞鶴,津軽,宗谷,北千島(幌筵(ほろむしろ)),海外植民地では台湾の基隆,高雄,朝鮮の鎮海,永興湾,羅津,中国の旅順などであった。これらの要塞は,〈要塞地帯法〉に基づき,要塞を中心に一定距離内を要塞地帯と指定され,この地域(第1区から第3区までに区別)においては,立入り,撮影模写測量,築造物の変更地形改造樹木伐採などが禁止もしくは制限され,罰則をもうけて厳重に保護された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「要塞」の意味・わかりやすい解説

要塞
ようさい

ある地域の戦術的価値を高めるために構築された防御的軍事施設。大別して永久要塞と野戦要塞がある。またその行為を要塞化といい、多数の要塞の連なった線を要塞線という。永久要塞は、平時から重要な海岸、港湾、国境、島、都市要地などの地上と地下に堅固な陣地を構築し、砲台、銃座、障害物、通信、観測、医療、居住の各設備や倉庫、交通路を備え、地上、海上、空中からの攻撃に長期的に耐え、また攻撃の拠点となるよう総合的に構成されている。国境、沿岸、島嶼(とうしょ)、要地の各要塞に分類される。構築材としては金属、石、コンクリート、れんが、土砂などで、多大の月日と費用をかけて構築される。野戦要塞は、敵と近接する戦場で比較的短時日に応急的材料で構築するもので、前者に比べて強度や防御力は劣るが、戦闘の膠着(こうちゃく)化につれて補強され、永久要塞化されることが多い。

 古代から堅固な城塞や砦(とりで)は数多いが、近代的要塞の代表例は、クリミア戦争時のセバストポリ要塞、150日間の持久力を誇った日露戦争時のロシアの旅順(りょじゅん)要塞、第一次世界大戦時フランスのベルダン要塞、第二次大戦時イギリスの香港(ホンコン)要塞・シンガポール要塞、アメリカのコレヒドール要塞。要塞線では、ドイツのヒンデンブルク、ジークフリート、フランスのマジノ、ソ連のスターリンなど。また日本では、お台場に起源する東京湾要塞などの沿岸要塞、満州(中国東北部)虎頭(ことう)の国境要塞、対馬(つしま)要塞などの島嶼要塞があったが、虎頭要塞以外は戦闘はなかった。現在、要塞の戦略的価値は、機動力の欠如、核兵器の登場、航空機の発達などにより、しだいに低下しつつある。

[寺田近雄]

『浄法寺朝美著『日本築城史』(1971・原書房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「要塞」の意味・わかりやすい解説

要塞
ようさい
fortress

敵の攻撃に対抗できるように,軍事技術や建築工学を応用して造られる堅固な構築物のこと。古代から戦争の変化に応じて,さまざまの形式のものが現れた。構築の強度や使用目的などから,一般に永久要塞と野戦要塞に分類される。国境や海岸,重要都市などに築かれる永久要塞は,敵の攻撃にできるだけ長くもちこたえられるように,また味方の部隊の安全な避難場となりうるように,煉瓦,コンクリート,石などで入念に築かれる。野戦要塞は,敵と接触したり,または危険が差迫っている際に臨時的に築かれるもので,永久要塞より強度や規模は劣る。前者としては旅順要塞や第2次世界大戦のマジノ線が,後者としては第1次世界大戦に塹壕を連ねたヒンデンブルク線が有名。最近の戦争では機動力が増大したため,軍事的価値は低下した。

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普及版 字通 「要塞」の読み・字形・画数・意味

【要塞】ようさい

重要なとりで。

字通「要」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の要塞の言及

【陣地】より

…19世紀後半,爆裂弾の採用は城塞攻撃を著しく進歩させた。これに対し築城もまた改革され,要塞化するようになった。戦略上重要な国境,都市,港湾,交通上の要地には平時から堅固な陣地が構築され,あらゆる火砲の威力から防護される施設が考案された。…

※「要塞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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