改訂新版 世界大百科事典 「センウセルト3世」の意味・わかりやすい解説
センウセルト[3世]
Senusert Ⅲ
古代エジプト第12王朝5代目の王。在位,前1878年ころ-前1840年ころ。行政改革を断行して地方の世襲大貴族の無力化に成功し,第12王朝創建以来の目標であった王を頂点とする中央集権国家の確立を最終的に達成した。その背景には歴代ファラオの推進したファイユームの干拓と,〈庶民〉の子弟の登用による忠実な官僚の養成の成果に加えて,軍事遠征の成功がある。4回のヌビア親征によってナイル川第2急湍(きゆうたん)南のセムナまで征服し,河畔に設置した八つの要塞群により国境を固め,さらに隊商路確保のため小規模ながら古代エジプト史上初めて南パレスティナに軍事遠征を試みた。ヘロドトスの《歴史》に記された〈大征服者〉セソストリスSesōstrisの伝説の核には王の事績があるとみられる。ダフシュールのピラミッド付属の〈王女たちの地下回廊〉出土の豪奢な装身具類は〈ダフシュール遺宝〉の名で知られている。
執筆者:屋形 禎亮
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報