日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソテツ地獄」の意味・わかりやすい解説
ソテツ地獄
そてつじごく
大正末期から昭和初期にかけての沖縄県の経済的窮状をさすことば。主食(サツマイモ・米)を確保することもできずソテツ(猛毒を含み、調理法を誤ると中毒死する)を常食とせざるをえないほどの苦境下にあったことからその名が生まれた。第一次世界大戦後の戦後恐慌に端を発する長期不況は、全国の都市と農村に大きな打撃を与えたが、とりわけ生産基盤の脆弱(ぜいじゃく)な沖縄県では深刻な事態が発生した。県の基幹産業である糖業が糖価の暴落により不振に陥り、農業経営を大きく圧迫した。これに負担能力を超える高い租税が拍車をかけ、人身売買、移民・出稼ぎ者の急増を招いた。
市町村財政も逼迫(ひっぱく)し、吏員、教員への給料未払いや金融機関の倒産も相次いでおこった。こうしたなかで沖縄救済論議が活発となり、政府も沖縄振興計画の策定を余儀なくされたが、抜本的な経済振興の達成をみることなく窮状は慢性化し、やがて沖縄戦(1945)を迎えるに至った。
[高良倉吉]