拍車(読み)ハクシャ

デジタル大辞泉 「拍車」の意味・読み・例文・類語

はく‐しゃ【拍車】

乗馬靴のかかとに取り付ける金具。馬の腹に刺激を与えて速度を加減する。ふつう歯車付きで馬体を傷めないようになっている。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「拍車」の意味・読み・例文・類語

はく‐しゃ【拍車】

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] spur訳語 ) 乗馬靴のかかとに取りつける金具。先端に歯車がついていて、馬腹に当てて刺激を与え、馬を御するのに用いる。馬刺輪。
    1. [初出の実例]「かかる時彼鉄板は腋を打ちて、拍車に釁(ちぬ)ると聞く」(出典即興詩人(1901)〈森鴎外訳〉謝肉祭)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「拍車」の意味・わかりやすい解説

拍車
はくしゃ

乗馬靴のかかとに取り付けた金属製の馬具後方に突出し、乗馬中、必要に応じてウマのわき腹を刺激する道具である。拍車は刺激を与える歯車の意味。しかし、中国語の拍車の本来の意味は戦車などのことである。拍車は紀元前4世紀にケルト人が使用していたとされている。初期のものは1本のとげ状のものであったが、のちには歯車状のものとなり、ヨーロッパの中世の騎士はかならず装着し、鉄、金、銀製のものがある。日本では明治以後用いられている。近年は馬体保護のため、あまり使用されなくなっている。安土(あづち)桃山時代に渡来したポルトガル人は、日本の乗馬具に拍車がないと記している。江戸時代には拍車の訳名はなく、仮名で「スポール」と記し、明治初期は「刺馬輪」と和訳してある。拍車という文字は明治中期に現れ、現在は馬具としてより、「拍車をかける」という表現のことばとして盛んに使われている。

[松尾信一]

『加茂儀一著『家畜文化史』(1973・法政大学出版局)』『加茂儀一著『騎行・車行の歴史』(1980・法政大学出版局)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「拍車」の意味・わかりやすい解説

拍車
はくしゃ
spur

馬具一種。乗馬の際,靴のかかとに取付ける金具で,先端に小さな花車がつけられており,これで馬の腹部に刺激を与え馬を制御する補助とする。古くはかかとの一端にとがった棒をつけただけのものであったが,現在のような形状の拍車を用いるようになったのは 14世紀初頭以後である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android