改訂新版 世界大百科事典 「タガンカ劇場」の意味・わかりやすい解説
タガンカ劇場 (タガンカげきじょう)
Moskovskii teatr dramy i komedii na Taganke
ロシア,モスクワにある劇場。1964年スターリン批判後の自由化の雰囲気の中で,演出家リュビーモフを中心にワフタンゴフ劇場付属演劇大学卒業の若い俳優によって創立された。社会主義リアリズムが確立されていくなかで,形式主義と批判されていたメイエルホリドなど,1920年代のソ連前衛芸術の方法を大胆に復活,発展させ,共産主義をその原点に立ち返った視点から見直す厳しい現状批判の演劇活動を展開し,その演劇的活力は世界的に注目を集めている。客席数450ほどの小劇場ながら,大衆的な〈街頭の演劇〉を志向するリュビーモフの演出は,意外性に富む着想に満ち,従来の戯曲概念を破って詩や小説やルポルタージュの演劇化に向かうことが多い。検閲をめぐる当局との葛藤から何度か閉鎖の危機に見舞われながら,80年に800席の新劇場ができて旧館の70~150席の小舞台を含め三つの舞台をもつ。リュビーモフは1984-87年国外追放にされたが,その復帰後,劇場も活力をとり戻している。代表作は《世界をゆるがした10日間》《巨匠とマルガリータ》《罪と罰》など。
執筆者:宮沢 俊一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報