タバカート(その他表記)ṭabaqāt

改訂新版 世界大百科事典 「タバカート」の意味・わかりやすい解説

タバカート
ṭabaqāt

アラビア語タバカṭabaqaの複数形で,〈同じ状態にある者〉を意味する。ハディース学では同一世代の学者をいう。ハディース学において,世代が問題とされるのは,イスラムにおけるハディースのあり方と大きくかかわっている。すなわち,預言者ムハンマドの同世代人が預言者の言行に関する伝承ハディースを次の世代に語り継ぎ,彼らがさらに次の世代に語り継ぎ,それが記録されるときには,その本文マトンのほかに,代々ハディースを語り伝えた伝承者の名をイスナードとして記録する。そしてハディースの真偽の検討のために,世代ごとにまとめられた伝承者の伝記集が編纂されたが,このような形式の伝記集をもタバカートといい,後にはウラマースーフィーなどの師弟関係を基準にした世代別の伝記集もタバカートと呼ばれた。

 また,タバカートは社会階層を意味し,たとえば,支配者,学者・知識人,戦士,農・工・商人のおのおのを一つのタバカとした。近・現代になって共産主義・社会主義思想がアラブ世界に導入されると,搾取・被搾取の関係を軸にした社会階級の概念を表すのにも,タバカートが用いられるようになった。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のタバカートの言及

【歴史】より

…このようなハディース学の最も重要な部分は伝承過程の記録イスナードの吟味にあるが,そのためにはハディースの伝承に関係のあったすべての人の,住んでいた場所と年代とが明らかにされなければならない。イブン・サードはこのような目的をもって初期イスラム教徒の伝記集《タバカート(大伝記集)》を著し,イスラム史学独特の伝記集タバカートの伝統を開いた。生き生きした人物描写に欠けるとの評はあるものの,カーディー(裁判官),法学者,スーフィー,文学者,医学者など特定分野の専門伝記のほかに総合的な人名事典も編まれ,伝記はイスラム史学の重要な一部門を占める。…

※「タバカート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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