ウラマー(読み)うらまー(英語表記)‘ulamā'

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウラマー」の意味・わかりやすい解説

ウラマー
うらまー
‘ulamā'

イスラム世界における伝統的教学担い手である知識人層。アラビア語の「知識ある者」(アーリム‘ālim)の複数形。ここでいう知識とは、コーランスンナ範例)およびそれに基礎を置いたイスラム法、イスラム神学に関するものをさし、神秘主義、外来のギリシア的哲学、さらに近代の諸科学に関するものはそれ自身としては含まれない。イスラム教教義、制度の実質を規定する共同体の合意イジュマー)を形成する当事者である。共同体全体の合意は、さまざまな次元で合意を積み重ねていく緩慢な過程を経て成立したものであり、ウラマーの意見を権威的に統一する機関は存在しない。実際にウラマーを形づくるのは神学校(マドラサ)の教授、モスクの役職者、そしてカーディー(裁判官)ら実際の法運用に携わる者たち、さらには在野学者たちである。彼らは時の政治権力にイデオロギー的支えを提供する場合も、また逆にイスラム法を盾に支配の恣意(しい)を抑制する場合もある。

鎌田 繁]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウラマー」の意味・わかりやすい解説

ウラマー
`ulamā'

イスラム社会の知識人,学者をいう。伝承学法学,神学に関する知識の保持者を意味する`ālimの複数形。宗教,法律,神学の問題について最終的な決定権をもち,イスラム教徒の社会生活をさまざまな面から規定する役割を果した。 19世紀以降はイスラムの伝統的な価値を擁護して,西欧化主義をとる近代化論者と対立するものが多かった。

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