改訂新版 世界大百科事典 「ダゲスタン諸族」の意味・わかりやすい解説
ダゲスタン諸族 (ダゲスタンしょぞく)
カフカス地方に住む諸民族の一部をいい,二つの意味に用いられる。一つはカフカス諸語のうちのダゲスタン語群に属する諸言語を用いる民族を指し,他の一つはダゲスタンに住む土着の諸民族の総称で,この場合はチュルク語系の言語を話すクミク人,ノガイ人を含み,人口144万4000(1989)を数える。古代のカフカス・アルバニア王国,中世グルジア王国の努力で南部を中心にキリスト教化が進んだが,16世紀までには,イスラムのスンナ派の信仰が圧倒的になった。イラン語系ターティー語を用いる少数のユダヤ教徒が残る。古代には彼らの居住域ははるかに広く,一部の民族はカフカス・アルバニア王国を建てた。中世には交易の中継点デルベントが発展,12世紀からは,アバール族のサリール国,ラク族のシャムハル,カイタグのウスミなどの封建国家が発展したが,19世紀初期ロシア領に併合されるまで統一国家は成立しなかった。〈言語の森〉と称されるように,極端な多言語地域であるが,概して均一の文化をもち,婚姻においても族内婚が支配的であった。
→ダゲスタン[共和国]
執筆者:北川 誠一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報