改訂新版 世界大百科事典 「ティブルティナ」の意味・わかりやすい解説
ティブルティナ
Tiburtina
中世ヨーロッパで重んじられた予言者。古代ギリシア・ローマにおいては女予言者シビュラの予言の書が国家行政や戦争遂行の指針を与えるものとされていた。その中で後世高名となったのがミケランジェロの絵で知られるクマエとティブルティナであった。特にティブルティナは中世における最も有名な女予言者で,次のような伝承がある。すなわち彼女はプリアモス王の娘で,小アジアからエジプト,バビロニアなどを訪れ,やがてローマに呼ばれ,元老院議員たち100人が一夜にみた同じ夢の解釈をした。ティブルティナの予言の書は4世紀に東地中海で成立し,ローマの滅亡ののち11世紀にロンバルディアに現れ,さまざまな書き変えをうけながら中世末期まで西欧の終末思想に大きな影響を与えつづけた。そこでは世界史の全体が予言の対象となり,最後の皇帝が出現し,神の支配の時が到来するまでの政治史の経過が,そのときどきの支配者の名を暗示しながら描かれている。
執筆者:阿部 謹也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報