日本大百科全書(ニッポニカ) 「テングフルーツコウモリ」の意味・わかりやすい解説
テングフルーツコウモリ
てんぐふるーつこうもり
tube-nosed fruit bat
広義には哺乳(ほにゅう)綱翼手目オオコウモリ科テングフルーツコウモリ亜科に属する動物の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。この亜科Nyctimeninaeの仲間は果物を食べる小形のコウモリで、オーストラリア、ニューギニア島およびその周辺の島に2属13種が分布する。テングコウモリに似るが、鼻が太く筒状で基部から約6ミリメートル突出する。前腕長50~90ミリメートル、頭胴長80~140ミリメートル、20ミリメートル内外の短い尾がある。体の背面は灰黄褐色で、その正中部に暗色の縞(しま)模様がある。翼、前腕部、耳介に黄色の斑点(はんてん)がある。ほかのオオコウモリ類より歯が少なく、とくに臼歯(きゅうし)の歯冠部は平坦(へいたん)で幅広く、果物を食べるのに適応している。森林にすみ、単独でヤシなどの樹(き)の枝や幹などにぶら下がり、普通、翼で体を巻いて休息する。声を出すときや怒るときなどに、鼻筒を外方に伸ばして体を震わせる。
種のテングフルーツコウモリNyctimena albiventerはオーストラリア北東部、ニューギニア島、およびモルッカ、ビスマーク、ソロモンの各諸島に分布する。前腕長は60ミリメートル前後で、背面の縞模様の幅は狭い。
[吉行瑞子]