ディオニュシオスハリカルナッセウス(その他表記)Dionysios Halikarnasseus

改訂新版 世界大百科事典 の解説

ディオニュシオス・ハリカルナッセウス
Dionysios Halikarnasseus

前1世紀後半のギリシア人修辞学者,歴史家。生没年不詳。小アジアのハリカルナッソス出身で,前30年頃からローマに居住し,弁論術を教授するかたわらローマ史研究に従事した。修辞学や文芸批評論文には《語順論》《模倣論》《トゥキュディデス論》などがあり,前5~前4世紀のアッティカ古典時代への復帰運動を提唱して,〈アッティカ主義〉の先駆者となった。歴史家としては,ローマの建国から第1次ポエニ戦争のはじめまでを扱った《ローマ古代史》20巻を著した。現在,最初の10巻とその他の巻の断片が残っているが,これはローマの年代記作家の記録を編集したものであり,混乱に陥ったり,史実に照らして疑問の点も多いが,リウィウスのローマ史の補充として貴重である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のディオニュシオスハリカルナッセウスの言及

【ギリシア文学】より

…共和政ローマの政治家・知識人にとってアテナイ留学は必修課程であり,またロドス島のストア派の大学者パナイティオスやその弟子ポセイドニオスの教えを請うた者たちも数多い。アウグストゥス帝の時代にもギリシアの学者たちは優れた専門家としての好遇を受けるが,中でもハリカルナッソスのディオニュシオス(ディオニュシオス・ハリカルナッセウス)の著述は今日までよく伝存し,その《ローマ史》は貴重な文献資料であり,またそのギリシア文芸や弁論家についての著述や《トゥキュディデス論》は,ローマ時代はもとよりルネサンス以降の近世人のギリシア語・ギリシア文学理解に多大の影響を与えた。またアレクサンドリアでは,ギリシア文学研究の資料散逸を憂えたディデュモスが,数千巻を数える注釈書を草したと伝えられ,今日わずかにパピルス巻本で残っている《デモステネス》注釈は,古代随一の文献学者の該博な知識と旺盛な探究心の一端を鮮やかにとどめている。…

※「ディオニュシオスハリカルナッセウス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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