ディオニュソス譚(読み)ディオニュソスたん(その他表記)Dionysiaka

改訂新版 世界大百科事典 「ディオニュソス譚」の意味・わかりやすい解説

ディオニュソス譚 (ディオニュソスたん)
Dionysiaka

5世紀のギリシア詩人ノンノスNonnosの長編叙事詩。全48巻。ギリシア神話の酒神ディオニュソスバッコス)の物語を集成した作品で,内容は,酒神の誕生より青年時代(1~12巻),インド遠征(13~24巻),インド人との戦い(25~40巻),ギリシアへの凱旋天上への帰還(41~48巻)の四つの部分から成る。ディオニュソス神の恋と冒険の物語であるが,酒神伝説その他当時の宗教研究の貴重な資料ともなっている。ディオニュソス伝説は古来,芸術・文学に多くの題材を提供し,古くは《ホメロス賛歌》(前8~前6世紀)中の三つのディオニュソス賛歌,前5世紀の悲劇詩人エウリピデスの《バッコスの信女》などがある。この神はヘレニズム期初頭以降,万神中最も人気を集めた。インド遠征の伝説がアレクサンドロス大王の東征に投影されたためである。工芸家とともに多くの詩人がこの神話に題材を求めた。前3世紀のカルキスの人エウフォリオンの《ディオニュソス》,パリオンの人ネオプトレモスの《ディオニュシアス》その他の叙事詩が知られている。また,ローマ帝政期に酒神崇拝が再流行し,4世紀ころにディオニュシオスによる《バッサリカ(バッコス譚)》18巻,オアシスの人ソテリコスによる《バッサリカ》4巻その他の叙事詩が作られたが,これらはほとんど散逸した。ノンノスのこの作品は伝存中最も有名なものである。
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