日本大百科全書(ニッポニカ) 「バッコス」の意味・わかりやすい解説
バッコス
ばっこす
Bacchos
ギリシア神話の酒神ディオニソスの異称。ラテン語ではバックス、英語式に発音すればバッカスBacchusとなる。バッコスの原義は未詳であるが、リディア系の名であるらしい。また、ローマ神話では、バッコスをディオニソスの呼称にし、豊穣(ほうじょう)と酒の神リベルLiberと同一視した。リベルは古いイタリアの神で、神話らしいものはなく、またこの神はもともとはディオニソスそのもので、ディオニソスの異称エレウテリオスEleutheriosのラテン語訳として、この名称ができたともいわれる。ローマのバッコスは、優雅で女性的な美青年として描写されるのが普通であり、ブドウの木と木蔦(きづた)、山羊(やぎ)とイルカなどが彼の聖なる動植物とされた。
[伊藤照夫]