日本大百科全書(ニッポニカ) 「デディエル」の意味・わかりやすい解説
デディエル
ででぃえる
Vladimir Dedijer
(1914―1990)
旧ユーゴスラビアの歴史家。ベオグラード大学法学部卒業後、『ポリティカ』紙の記者としてイギリス、スペインなどに駐在。1941~1945年の民族解放戦争期には、共産党機関紙『ボルバ』の編集や中央委員会情宣局で働く。戦後は『ボルバ』の主筆や政府の情宣局長を務めたが、1954年に副首相ジラスが自由化政策に偏向していることを理由に解任されたとき、彼を弁護した。このため裁判にかけられ、6か月の禁錮(きんこ)刑に処せられた。以後公職につけず、歴史研究に没頭し、欧米の大学の客員教授として現代史を講じる。またベトナム戦争犯罪調査のラッセル法廷会議議長を務めるなど国際的に活躍。1978年にセルビア科学・芸術アカデミー正会員となる。著作に、チトーの伝記として重要な『チトーは語る』Tito Speaks(1953)、旧ソ連との抗争の内幕を描いた『クレムリンの敗北』The Battle Stalin Lost ; Memoirs of Yugoslavia, 1948-1953(1971)など。
[柴 宜弘]
『高橋正雄訳『チトーは語る』(1970・新時代社)』▽『平井吉夫訳『クレムリンの敗北――いかにユーゴはソ連に抵抗したか』(1981・河出書房新社)』