ジラス(読み)じらす(英語表記)Milovan Djilas

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジラス」の意味・わかりやすい解説

ジラス
じらす
Milovan Djilas
(1911―1995)

旧ユーゴスラビアの政治家、文筆家モンテネグロ出身。ベオグラード大学在学中の1932年に共産党に入る。チトーに認められ、1938年に党中央委員、1940年に党政治局員となり、対独パルチザン戦争では、中将の資格でチトーの司令部指揮をとった。1953年に副首相、ついで国会議長となったが、同年『新思想』誌で党高官の腐敗を告発してチトーの怒りを買い、1954年1月にすべての地位剥奪(はくだつ)された。1956年に3年の実刑判決を受けたが『新しい階級』を国外で発表し、7年の刑を加算された。1961年に仮出所したが、『スターリンとの対話』をアメリカで出版し、1962年に7年の刑を宣告された。1966年に出所。その後も自宅で「自由公開大学」を開き体制を批判するなど健在ぶりを示した。

木戸 蓊]

『原子林二郎訳『新しい階級』(1957・時事通信社)』『新庄哲夫訳『スターリンとの対話』(1968・雪華社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジラス」の意味・わかりやすい解説

ジラス
Djilas, Milovan

[生]1911.6.4. モンテネグロ,コラシン
[没]1995.4.20. ベオグラード
ユーゴスラビアの政治家。ベオグラード大学で文学と法律学を学んだ。 1932年共産主義者同盟 (共産党) に加入,3年間投獄された。 38年党中央委員,40年党政治局員となり,チトーの片腕としてパルチザン戦争の指揮に参加,3度ソ連を訪問して I.スターリンとの交渉にあたった。 53年副大統領に就任したが,雑誌論文で体制批判を行い,54年公職から追放された。 56年ハンガリー事件の批判論文をアメリカの新聞に寄稿して3年の実刑判決を受け,その間に『新しい階級』 The New Class (1957) などを国外で発表し,加重刑を受けた。 61年出獄したが,『スターリンとの対話』 Conversations with Stalin (62) を外国で出版し5年の刑を宣告された。 66年恩赦で出獄したが,77年2月国内の政治犯釈放を要求するなどの発言を続けた。 89年,35年ぶりに名誉回復を果した。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ジラス」の解説

ジラス
Milovan Djilas

1911~95

ユーゴスラヴィアの政治家。モンテネグロに生まれ,ベオグラード大学で文学と法律学を学ぶ。学生時代に非合法の共産党に入党し,1940年に党中央委員会政治局員となる。パルチザン戦争期には,ティトー腹心として最高司令部で活動。戦後,社会主義ユーゴスラヴィアの要職を歴任し,53年には副首相となる。徹底した反スターリン主義の立場から,分権化による民主主義的な統治の推進を主張した結果,54年にその職を解任された。反社会主義的言動の罪で2度裁判にかけられ投獄されたが,60年代から文筆活動を続けた。『新しい階級』などの政治的な著作は国外で発表され,西側世界で反響を呼んだ。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

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