自由刑の一種。刑法で規定される(9条、13条など)。自由刑とは受刑者を刑事施設に拘禁してその自由を剥奪(はくだつ)する刑罰で、現行刑法には、自由刑として懲役、禁錮のほか、短期(1日以上30日未満)の自由刑としての拘留がある(刑法12条、13条、16条)。懲役と禁錮には1月以上20年以下の有期と無期とがある(ただ、刑法14条により、有期の場合も30年まで加重することができ、1月未満に下げることも可能である)。
懲役と禁錮では受刑者を刑事施設に拘置することになるが、懲役の場合には受刑者に労務(刑務作業)が義務づけられるが、禁錮ではこれが義務づけられない。ただ、禁錮の場合でも、受刑者は請願により作業(請願作業という)に就くことができるが、いったんこの作業に服すると、正当な理由なくしてこれを免れられない。
ところで、懲役と禁錮とは犯罪行為そのものの性格に関し、破廉恥な動機による場合か否かの区別に対応し、禁錮は、政治犯などの確信犯や過失犯のように非破廉恥的動機による場合に科すべきものと一般に解されている。しかし、このような懲役と禁錮とを区別する現行法に対して、破廉恥な犯罪であるから労役を強制するというのは前近代的な労働蔑視(べっし)の思想であるとか、破廉恥か否かの区別は不明確であり、すべての犯罪をいずれかに分類することは不可能である、などの批判が強い。このような立場からは、懲役と禁錮との区別を廃止して、両者を一本化すべしとする「自由刑の単一化」が主張されている。
[名和鐵郎]
受刑者を監獄に拘置することを内容とする自由刑の一種。終身を意味する無期と,1ヵ月以上15年以下の有期とがあること,無期禁錮にも仮釈放はあること,有期禁錮は加減によって最高20年,最低1ヵ月以下になること,特定の場合に(現在は実際上9割ほども)執行猶予がつくこと,少年には不定期刑もあること,などは懲役と同じであり,老齢等を理由とする執行停止があることは拘留とも同じである。強制作業たる定役のない点で懲役と異なる。このため,禁錮は一種の名誉拘禁とされ,禁錮刑にあたる内乱罪などの政治犯や業務上(重)失火罪などの過失犯は,非破廉恥犯だとされる。これに対しては,作業義務の有無で破廉恥犯と非破廉恥犯とを区別するのは労働蔑視ではないか,そもそも犯罪に破廉恥と非破廉恥の区別をしうるのか,あるいは,多数の懲役受刑者をことさらに破廉恥犯とすることは無用の烙印ではないか等の批判がなされる。また,定役のない禁錮受刑者も,ほとんどが請願作業で就労していることや,塀のない千葉県市原刑務所など,元来は交通禁錮受刑者のための特殊な集禁処遇であったものが,最近では懲役囚をも対象としていることなどもあって,懲役と禁錮の区別を廃止する自由刑単一化が主張される。これに関しては,犯罪者改善策としての作業を強調する禁錮廃止論と,自由刑純化の立場から刑罰としての定役に反対する禁錮一元化論などがある。しかし,伝統的な禁錮存置論にも依然として根強いものがある。
→行刑 →刑務所
執筆者:吉岡 一男
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…やがて,フランス刑法を範とした旧刑法(1870公布)は,きわめて多様な自由刑を認めたために,刑名も多くなった。死刑,徒刑,流刑,懲役,禁獄(以上,重罪の主刑),禁錮,罰金(以上,軽罪の主刑),拘留,科料(以上,違警罪の主刑),および,剝奪公権,停止公権,禁治産,監視,罰金,没収(以上,付加刑)がそれであった。現行刑法(1907公布)は,刑の種類をはるかに制限し,徒刑(とけい),流刑(いずれも,犯罪人を離島などの遠隔地に送致し,その地において有期または無期間滞在させる刑。…
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