日本大百科全書(ニッポニカ) 「トロピーニン」の意味・わかりやすい解説
トロピーニン
とろぴーにん
Василий Андреевич Тропинин/Vasiliy Andreevich Tropinin
(1776―1857)
ロシアの画家。農奴として生まれ、1798年ころからサンクト・ペテルブルグの美術アカデミーでシチューキンStepan Shchukin(1762―1828)のもとで学んだが、1804年には地主に呼び戻され、1823年に初めて自由の身となった。主として肖像画を描き、『ブラーホフの肖像』(1823)、『レース編みする娘』(1823年。ともにモスクワ、トレチャコフ美術館)、『プーシキン』(1827年。モスクワ、プーシキン記念館)は有名。また、肖像画制作のためのおびただしいデッサンはそれ自体として高い芸術的価値をもつ。農奴に生まれながら、対象を描くときは、相手の社会的地位とは無関係に、一個の人間として愛情のこもったまなざしで描いている点に、肖像画家としての面目が感じられる。
[木村 浩]