トロピーニン(読み)とろぴーにん(その他表記)Василий Андреевич Тропинин/Vasiliy Andreevich Tropinin

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トロピーニン」の意味・わかりやすい解説

トロピーニン
とろぴーにん
Василий Андреевич Тропинин/Vasiliy Andreevich Tropinin
(1776―1857)

ロシア画家農奴として生まれ、1798年ころからペテルブルグの美術アカデミーでシチューキンのもとで学んだが、1804年には地主に呼び戻され、23年に初めて自由の身となった。主として肖像画を描き、『ブラーホフの肖像』(1823)、『レース編みする娘』(1823・ともにトレチャコフ美術館)、『プーシキン』(1827・プーシキン記念館)は有名。また肖像画制作のためのおびただしいデッサンはそれ自体として高い芸術的価値をもつ。農奴に生まれながら、対象を描くときは、相手の社会的地位とは無関係に、一個の人間として愛情のこもったまなざしで描いている点に肖像画家としての面目が感じられる。

木村 浩]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トロピーニン」の意味・わかりやすい解説

トロピーニン
Tropinin, Vasilii Andreevich

[生]1776.3.19. /1776.5.16. カルポフカ
[没]1857.5.4/16. モスクワ
ロシアの画家。農奴出身でペテルブルグの美術アカデミーに学んだが中退させられ,48歳までモールコフ伯爵の農奴の身分にとどまった。 1823年自由の身になってモスクワで活躍。 V.ボロビコフスキーの影響を受け,『プーシキン像』 (レニングラード,プーシキン記念館) ,『レース編みをする女』 (トレチヤコフ国立美術館) などの肖像画や風俗画を描いた。

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