精選版 日本国語大辞典 「地主」の意味・読み・例文・類語
じ‐しゅ ヂ‥【地主】
じ‐ぬし ヂ‥【地主】
とこ‐ぬし【地主】
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農地などの土地を貸し付けて得た地代を中心に生活する者をいう。地主は、古代以来現在に至るまで存在するが、その存在の仕方は各時代において異なる。封建社会では、支配階級を構成する領主が地主(封建的土地所有者)として最高の領有権をもち、農奴から地代を収取した。封建制から資本主義へ移行するのに伴い、地主的土地所有は近代的土地所有へと転化し、地主の存在も社会のなかで変化するが、日本においては、むしろ明治維新後の近代社会のなかで地主的土地所有が発展したところに大きな特徴がある。
日本の耕地所有者は、戦前を通じてほぼ500万戸存在したが、そのなかから自作農と自小作農を除き、なんらかの形で土地を貸し付ける地主の構成は、1000町歩以上を所有する巨大地主を筆頭に、1町歩未満を貸し付ける膨大な零細地主に至るまでのピラミッド型をなしていた。
地租改正から松方デフレへと至る経済変動のなかで多くの農民や中小地主が没落したが、それらの土地を集積した地主のなかからは、1000町歩以上も所有する巨大地主が現れた。山形の本間家、宮城の斎藤家、新潟の伊藤家・市島家などがその代表である。この巨大地主のもとには、さらに50町歩以上を所有する大地主が連なり、1924年(大正13)における農商務省調査によれば巨大地主・大地主が全国に3163戸存在した。このうち北海道が787戸でもっとも多く、ついで東北が753戸であった。自村を越えた広大な土地を所有するこれらの地主は、不在地の管理のために中小地主や有力小作農を支配人として配し、高率高額小作料の安定的な収取を図った。こうして巨大地主・大地主は、中小地主―零細地主と連なる地主的ヒエラルヒーのトップに位置し、農村社会の支配権を掌握していた。彼らはまた、貴族院多額納税議員や衆議院議員として天皇制国家を政治的にも支える役割を担った。
ところで、小作料収入だけで生活ができるためには、3~5町歩の土地が最低必要であった。1908年(明治41)の5町歩以上所有者を全国でみると17万戸弱であり、そのもとには小作料収入だけでは生活不可能な零細地主が圧倒的に存在していた。零細地主には、自らも耕作をする耕作地主と他の職業を兼ねる不耕作地主とがあり、彼らはそれぞれ約100万戸ずつも存在していたと推定される。なかでも、概して1町歩未満を貸し付け、自らも農業経営に従事する耕作地主は、その多くが在村地主として存在しており、農村社会の実質的リーダーとしての役割を担っていた。
このような構成をとる日本の地主も、第一次世界大戦後には小作争議や経済変動のなかで徐々にその地位を後退させた。とりわけ小作料収入に寄生する地主の後退が著しく、戦時農業統制のもとでは、食糧増産の必要性から地主的土地所有への制限が強化され、地主の地位の後退がさらに進んだ。第二次大戦後の農地改革は、これらの地主の命運を最終的に閉ざした。
[大門正克]
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…〈じしゅ〉とも読み,広い意味では土地の所有者を指す。地主はこうした意味では階級社会の発生とともに存在したが,農業による生産を主とする時代になって,農地の所有は大きな意味をもち,自己の所有する農地を他人(小作人)に貸与・耕作させ,その代償として地代(小作料)を取り,自己のおもな生活収入とする階層が生じ,これを一般に〈地主〉と呼んだ。また自己の所有する土地を耕作する自作農と区別して,寄生地主ともいう。…
…老若の組織を持ち,番頭などの地位を持つおとな(老,乙名)に指導されるこうした自治的な村落は,年貢未進を立て替え,共同の仏神事,用水・山林等の管理を行い,代官の下で百姓請(地下請)の形で年貢を請け負ったが,一揆・逃散を繰り返すうちにしだいにその力を強め,室町期には未進年貢と借銭借米の破棄を要求する徳政一揆の基盤となっていった。 一方,この間にも荘園支配者による検注は行われ,新田・隠田の掌握の努力も放棄されたわけではなかったが,年貢・公事は早くから固定化する方向にあり,名主が地主(じしゆ)として加地子を収取することも鎌倉期からみられた。個々の田畠の名主職に付随するこうした加地子得分(片子(かたこ)ともいう)の売買もさかんに行われ,名主の下での耕作者,作人も加地子の一部を取るようになると,作人職,作職(さくしき)も現れてくる。…
…家屋敷は,イエの基礎となる家屋と,その敷地とからなるが,家持はこの両方を同時に所持している。これに対して,自分は他所に住み,家屋敷を有する者を家主,敷地のみを有する者を地主という。また,家屋敷の全部または一部を借りて居住する者を借家・店借(たながり),敷地を借りて家屋は自分で有する者を地借とよぶ。…
…江戸時代の土地政策。均田とは土地を平等に分けて均等にすることであり,〈おのれ田なくて,豪民の田をかりて田つくる……民みなおのが田をつくりて,年貢をひとかたに出すやうにぞあらまほしき,それは均田の法にまさることあらじとぞ思ふ〉(中井履軒《均田茅議》)と地主的土地保持の改革は近代以前にも思考された。均田政策とよばれるものは1664年(寛文4)対馬藩の寛文改革にもあるが,大々的に地主の土地処分と分給を行ったのは佐賀藩である。…
…18世紀半ば以降,小商品生産の展開に伴って成長していった村方地主をいう。経済的には作徳地主として小作人から小作料をとり,買占め商人として前貸しによって小生産者の生産した商品を手に入れ,みずからも生産者として年季奉公人を使役しながら,穀作とともに商品生産を行っているという,三つの性格をもっている。…
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【日本】
日本史研究において使用されている小作制度の意味は,江戸時代中期以降,農地改革まで続いた耕地貸借関係で,近代の農地制度を特徴づけていた制度のことである。なお耕地以外の貸借関係では,山小作・牛馬小作という言葉もあるが,ここでは狭義の小作,すなわち土地所持者たる地主が生産者たる農民(小経営)に耕地を貸し付けて,地代たる小作料をとるという形態に限定しておきたい。小作制度が問題となるのは,それが日本の近代農業を規定し,かつ特徴づけている農地制度だからである。…
…しかし18世紀前半(享保末年以降)に米価が下落するという事態に直面し,ここに幕初以来の在方酒造業の禁止という祖法を捨て,農村酒造業を積極的に奨励するという政策転換が打ち出された。これを契機に,農村では地主酒屋が酒造業を営むようになった。以後近世後期には商業的農業の展開と農村工業の発展に支えられて,地主制の進展とともに小作米を原料とする地主酒造業が広範に発達していった。…
…地士とも表記される。研究史上では,土豪・上層名主(みようしゆ)・小領主・中世地主などともいわれ,とくに一揆の時代といわれる戦国期の社会変動を推進した階層として注目される。中世社会の基本身分は侍・凡下(ぼんげ)・下人(げにん)の三つから成っていたが,中世後期の村落でも〈当郷にこれある侍・凡下共に〉〈当郷において侍・凡下をえらばず〉(〈武州文書〉)というように,侍と凡下は一貫してその基本的な構成部分であった。…
…中国文明の歴史は,南進の歴史といってよい。南船北馬,南人は軽薄,北人は素朴,南方は地主小作関係が多く,北方は自作農が多い,南方の士大夫は晩年は仏教にふけり,北方の士大夫は道教にふける,など南北を対比したいい方は無数にある。辛亥革命,人民革命の革命家がほとんど南方(とくに浙江,湖南,広東の3省)出身であったことはよく知られている。…
…また検地帳にも登録されない農民がいたが,彼らは〈帳外(ちようはずれ)〉と呼ばれ,屋敷地も耕作権も持たない最も隷属度の高い農民であった。 なお地域によっては,地主の別称として名請人という語を使う場合があった。【松尾 寿】。…
…それは乳・肉類の消費が少ないという日本人の伝統的な食生活慣行にもよるが,この畜産が本格的に発達してきたのは1950~60年代以降のことである。 第2は社会経済的な特徴であって,(1)第2次大戦以前に日本農業を支配してきた地主制が,戦後の農地改革によってほぼ完全に一掃され,農家のほとんど全部が自作農になったことである。かつては耕地の半ば近くが地主所有の小作地であったが,今日ではその大部分が自作地となり,農家は自分の所有地で農業を営む自作農となっている。…
…村を単位にした生産・生活の一環として,小農たる百姓の生産・生活が保障されている。 小農経営が確立すると,初期本百姓の系譜を引く上層の百姓の農業経営は,隷属的労働への依存を断ち切られて,年季奉公人を雇用する地主手作(てづくり)経営へと移行する。年季奉公人は小農=百姓の単婚小家族から放出される。…
…しかし現実には,明朝創建以後,一応平和状態が継続すると,元末の戦乱期に衰退した流通経済は活気をとり戻し,ことに北京遷都は,流通経済促進の大きなてことなった。明代の社会において力をもったのは,官僚層とその母胎としての地主層である。明朝ははじめ徙民(しみん)(移民)などによって自営農を育成し,農業生産を充実させる政策をとり,地主に対しては抑圧的な政策をとったこともあるが,支配機構を構成する官僚の大多数が地主層の出身であるから,結局は地主を容認し,さらには優遇せざるをえなかった。…
※「地主」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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