日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドゥジンツェフ」の意味・わかりやすい解説
ドゥジンツェフ
どぅじんつぇふ
Владимир Дмитриевич Дудинцев/Vladimir Dmitrievich Dudintsev
(1918―1998)
ソ連の小説家。ハリコフ県クピャンスク(現、ウクライナのハルキウ州クプヤンシク)の出身。モスクワの法科大学卒業後、第二次世界大戦の開始とともに陸軍に招集され、レニングラード(サンクト・ペテルブルグ)近郊の戦いで重傷を負う。1942年から終戦までシベリアの軍検察局に勤務し、詩や短編を書き始めた。スターリン時代の硬直した官僚主義体制の否定面を大胆に暴いた長編の代表作『パンのみによるにあらず』(1956)は、スターリン批判後の状況のなかで大きな反響をよんだ。
しかしそれ以後、ほとんど作品を発表せず忘れられた作家となっていたが、ペレストロイカとともに、30年ぶりに『白い衣』(1987)が活字となった。スターリン時代にソ連の生物学界で猛威をふるった「ルイセンコ」派に戦いを挑む誠実な生物学者たちを主人公にした作品。1988年度、ソ連国家賞を受賞。
[水野忠夫]
『山村房次・久野公訳『パンのみによるにあらず』(1957・講談社)』