陸軍(読み)りくぐん(英語表記)army

翻訳|army

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

陸軍
りくぐん
army

主として地上を活動領域とする軍隊で,空軍,海軍などと対応する軍種の一つ。歴史的には最も古くから知られている。古代人類の部族,都市などの自衛組織としての武装団体を軍隊とみるならば,それらは多くの場合陸軍であり,その兵器はすべて個人装備による格闘兵器であった。それが機動隊としての馬,遠戦兵器としての弓矢,弩弓の利用などにより,さらに火薬の採用によって,火力機動力と打撃力とをそなえた陸上戦闘の主体をなす軍となり,歩,騎,砲,工,輜重などの兵科も区分されるようになった。そして第1,2次世界大戦およびその後の経験と軍事技術の進歩により,戦車,大口径で機動力のある火砲,固定翼機,ヘリコプタ,核兵器の使用も可能となり,陸軍の火力と機動力と打撃力は大いに向上した。現在では陸軍は地上に密着した旧陸軍ではなく,大規模機動力をもった主要軍種となっている。

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百科事典マイペディアの解説

陸軍【りくぐん】

陸上の戦闘を担当する軍事組織。古代から軍隊の主要な部門で,近代には海軍空軍と並立。現在は統合的軍事組織へ移行する傾向が目立つ。古代国家では歩兵の密集部隊を中核とした大規模な陸軍がその権力の基礎であったが,封建時代に入ると少数精鋭の騎士が陸上戦闘の主役となった。15―16世紀火器の発達で歩兵隊の役割が増し,さらに砲兵の威力も増加し,職業的な常備軍が編制された。フランス革命後徴兵制による国民的軍隊が創建され,軍の規模は次第に大きくなり,両度の世界大戦では主要国は数百万の陸軍を動員した。第2次大戦後の核兵器と運搬手段の発達は,陸軍の様相をも一変させた。現在の陸軍は核弾頭ミサイルなどの攻撃力をはじめ,空輸機動力,電子兵器などを備え,編制自体も激しく変化しつつある。 近代日本陸軍の起源となったのは,1871年組織された御親兵で薩摩・長州・土佐3藩の献兵約1万名であった。1872年陸軍省が設置され,徴兵令も施行。1878年参謀本部が創設され軍政・軍令機関が分離された。1888年より師団による編制が行われた。日清・日露戦争を経て兵力は,大正時代の一時期を除き拡大の一途をたどり太平洋戦争に突入,敗戦により解体された。なお,主要国の陸軍現勢は,米国49万人,ロシア42万人,英国11万人,フランス21万人,ドイツ24万人,中国210万人。日本の陸上自衛隊は15万1800人(1998年)。

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世界大百科事典 第2版の解説

りくぐん【陸軍 army】

主として地上を活動の領域とし,地上戦闘を任務とする国防機関の総称で,海・空とあわせて3軍と呼ばれ,これらで国防軍を構成する。現代では国防軍の構成が複雑となり,機能の分科がすすみ,防空軍や戦略核ミサイル軍などを独立した軍種とする国もあるが,この場合でも,通常,3軍といえば陸・海・空軍を指し,これをもって国防軍を総称することが多い。3軍の中では陸軍が通常人員数が最も多く,担当する任務も広範である。陸軍には,海上輸送や,その支援護衛にあたる船舶部隊,地上戦闘を直接支援し,または空中偵察,指揮連絡に任ずる航空部隊等を含めることがあり,これとは反対に,地上で活動する部隊であっても,陸戦隊海兵隊は陸軍には含めない。

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大辞林 第三版の解説

りくぐん【陸軍】

陸上戦闘を主任務とする軍隊およびその軍備の総称。日本では第二次大戦まで存在したが、新憲法発布とともに廃止。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

陸軍
りくぐん
army

陸上における軍事行動の大部分を担任する軍種。沿岸、海峡の防御や海上輸送にあたることもある。地上戦闘は海兵隊によっても行われる。
 陸軍の任務は、敵地上部隊の破砕と地域の占領確保にあり、あわせて住民支配の役割をも担う。また国内においては、権力を支える最終的実力組織として、警察を補完する。
 古代国家において発生した軍隊は、陸軍の原型であった。原始社会で生活と生産の用具として生まれた刀や槍(やり)、弓矢などが地域の支配や奴隷の獲得をめぐる戦争に使われるようになった。古代の強国は、騎兵や歩兵からなる常備の軍隊を設け、大規模な略奪戦争を行った。
 14世紀以降、小銃と大砲が発達するに伴い、組織的な火力戦闘が重視されるようになり、歩兵隊が騎士団を圧倒した。フランス革命における国民軍の創設は、近代陸軍の始まりであった。またナポレオンによる火力、機動力を駆使した殲滅(せんめつ)戦略の展開は、近代戦争に道を開いた。
 多くの国が一般国民に兵役義務を課し、大規模な常備軍をもつようになった。その中心をなす陸軍は、18世紀以降、師団編成を採用し、歩兵、砲兵、騎兵の3兵科を統合的に運用する戦術が完成した。師団はまた多様な支援兵科をもつことにより、独立して作戦する能力を得て、遠く国外において長期にわたり活動できるようになった。
 日露戦争で本格的に使用された機関銃は、歩兵による陣地防御の優位性を高めたが、第一次世界大戦で戦車が出現、その打撃力、機動力、防護力をもって以後、戦場の主役となっている。騎兵にかわる戦車兵と砲兵、歩兵が陸軍の主力兵科となったのである。
 一方、19世紀から海軍が発展し、20世紀に入ると航空機が登場して航空兵力が重視されることになった。これにより作戦は立体化し、陸海空の統合運用が不可欠とされている。第二次大戦では広範かつ激烈な戦闘が長期にわたって戦われ、戦場は交戦国国土の全域に及んだ。
 大戦末に出現した核兵器とミサイルは、その後ますます発展し、地上戦の様相を根本的に変えた。アメリカ、旧ソ連など核大国の陸軍は打撃力の中軸として核兵器を装備し、さらに航空兵科をもち、空地一体の作戦態勢を整えていた。また砲兵火力はミサイルに重点を置き、その機能によって対空、対戦車、対地攻撃を任務とする兵科に分化してきている。
 近代日本の陸軍は1871年(明治4)天皇直属の軍隊として御親兵が組織されたところに始まる。同年、内乱鎮圧を目的とする鎮台が設置され、73年1月には徴兵令が施行された。88年の軍制改革により鎮台が廃止されて師団が編成された。
 こうして大陸作戦の準備を整えて日清(にっしん)戦争、日露戦争を戦い、これに勝利した。1907年(明治40)にはロシア、アメリカ、フランスを仮想敵国とし、対外攻勢戦略にたつ「帝国国防方針」を定め、陸軍40個師団が戦時所要兵力量として設定され、軍備の充実を進めた。1931年(昭和6)の満州事変以降、中国、東南アジアへ侵略戦争を拡大し、太平洋戦争に突入したが、45年(昭和20)8月ついに完全な敗北に至った。当時の陸軍兵力は640万人であった。
 敗戦の結果、陸海軍は解体された。だが1950年7月8日付け連合国軍最高司令官の指令により、警察予備隊が設置され、その後保安隊を経て54年陸上自衛隊に改編され、事実上の陸軍が復活した。97年現在の定員は18万人、戦車約1130両、火砲約6000門をもち、通常装備の質は世界の最高水準にある。
 世界の陸軍をみると兵力数(カッコ内単位万人)の順位は中国(220)、北朝鮮(100)、インド(98)、韓国(54.8)、トルコ(52.5)となっているが、質的には8位のアメリカが突出している。9位はロシアである。
 アメリカ陸軍は兵力49万人、主力戦車約1万5000両、火砲約1万4000門をもち、機甲師団、機械化師団、歩兵師団、軽歩兵師団、空中強襲師団、空挺師団の計10個師団に編成されている。うち2個師団がヨーロッパに、1個師団が韓国に駐留する。
 ソ連の地上軍はピークの1987年に200万人を保有していたが、現在のロシアは46万人へと激減している。予算は少なく、その大半は人件費、宿舎費にあてられており、兵器購入費は大幅に縮小されている。(データは1996年現在)。[藤井治夫]

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世界大百科事典内の陸軍の言及

【軍隊】より

…幕府は混乱のうちに倒れ,明治維新とともに近代的軍隊の創設がはじめられた。幕末,洋式軍事技術はまずオランダに学び,維新後,陸軍はフランス,のちにドイツに,海軍はイギリスに範をとった。1873年には徴兵令が施行され,国民的軍隊の基礎が築かれた。…

【歩兵】より

…陸軍の兵種(職種)の一つで,徒歩で戦闘するところから歩兵という。自衛隊では普通科といい,ロシアでは狙撃(そげき)兵と呼ぶ。…

※「陸軍」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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