改訂新版 世界大百科事典 「ナマジラ」の意味・わかりやすい解説
ナマジラ
Albert Namatjira
生没年:1902-59
オーストラリアの画家。アボリジニー(オーストラリア先住民)のアランダ族出身。中央部のハーマンズバーグ伝道所に生まれ,牧童となり,のちに民芸品をつくって売った。1934年水彩画家レックス・バタービーが同伝道所に立ち寄り,ナマジラは絵具と画用紙を与えられたのがきっかけで彼に弟子入りし,38年メルボルンで個展を開いた。以後全国に知られ,高く評価された。オーストラリア中央部の風景を紫を多用した水彩画に仕上げる画風は,彼の息子とその他の亜流を生み,アランダ派と呼ばれて今日に至っている。白人の手法で民族文化を表現した先駆者として,57年に同胞より10年早く市民権を授与された。しかし,これが白人の法と部族の掟との板ばさみになるきっかけを生み,禁酒法に縛られていた同胞に酒を提供したとがで懲役6ヵ月の刑を受け,仮出獄後まもなく居留地で没した。
執筆者:越智 道雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報