日本大百科全書(ニッポニカ) 「なよ竹物語絵巻」の意味・わかりやすい解説
なよ竹物語絵巻
なよたけものがたりえまき
絵巻。一巻。香川・金刀比羅(ことひら)宮蔵。鎌倉後期(14世紀なかばごろ)の制作と思われるが、筆者不詳。後嵯峨(ごさが)天皇の恋物語を描いたもので、本文は『古今著聞(ここんちょもん)集』にも収録されている。花徳門の庭で行われた蹴鞠(けまり)の遊びのおり、見物に現れた「なよ竹の」とよぶ美しい女房を見そめた帝(みかど)がこれに思いを寄せる。悶々(もんもん)とした日々を送る帝は人をしてついに女の所在をつきとめ、さる少将の妻であることを知りながら文を遣わす。女は夫の勧めで参内し、夫は隠者となるが、やがて召されて近習(きんじゅ)となり、中将に昇進する、という内容が説かれる。絵は作絵(つくりえ)風の物語絵の系統を引くが、描写が硬く、類型化が進んでいる。重文。
[村重 寧]
『小松茂美編『日本絵巻大成20 なよ竹物語絵巻』(1978・中央公論社)』