石灰岩(読み)セッカイガン(その他表記)limestone

翻訳|limestone

デジタル大辞泉 「石灰岩」の意味・読み・例文・類語

せっかい‐がん〔セキクワイ‐〕【石灰岩】

炭酸カルシウムを主成分とする堆積岩たいせきがん。主に方解石からなり、ふつう白色や灰色。貝殻・サンゴ有孔虫などの生物遺体が堆積した生物岩と、化学的沈殿により形成された化学岩とがある。セメント石灰などの原料、石材として利用。→石灰石
[類語]堆積岩水成岩凝灰岩大谷石粘板岩礫岩砂岩泥岩

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精選版 日本国語大辞典 「石灰岩」の意味・読み・例文・類語

せっかい‐がんセキクヮイ‥【石灰岩】

  1. 〘 名詞 〙 炭酸カルシウムを主成分とする堆積(たいせき)岩。海底に堆積した生物の遺骸(いがい)や水中の炭酸カルシウムから生じ、ふつう白色や灰色で塊状または層状に分布する。古生代や中生代に堆積したものが多く、有孔虫・二枚貝・珊瑚・石灰藻などの化石を含むもの、あるいは含まないものがある。大理石は石灰岩が変成して方解石の結晶粒が大きくなったもの。建築用材や石灰、セメントの原料など広く用いられる。石灰石。
    1. [初出の実例]「為めに石灰岩は内部に在りて自から溶解し、洞窟を鑿ちて深山中に奇怪を倍す」(出典:日本風景論(1894)〈志賀重昂〉五)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「石灰岩」の意味・わかりやすい解説

石灰岩
せっかいがん
limestone

炭酸カルシウムを主成分とする堆積岩(たいせきがん)の一種。主として方解石からなり、一般に細粒・塊状の岩石で、化石をよく含んでいる。色は白色または灰色であるが、含まれる不純物によって黄色、赤褐色、暗灰色などとなる。産状としては、塊状あるいはドーム状の岩体をなす場合と、層状をなす場合とがある。陸地から供給される砕屑(さいせつ)物が少ない熱帯・亜熱帯の浅海域で、たとえばサンゴ礁のように、炭酸石灰質の骨格あるいは殻を分泌する生物によって有機的に沈殿固定されるか、または海水から直接無機化学的に沈殿して形成される。こうして形成された石灰岩が二次的に壊されてできた石灰質の砕屑物からつくられたものもある。

 石灰岩を構成する物質には、有孔虫、紡錘虫(フズリナ)、石灰藻、ウミユリ、サンゴ、二枚貝、腕足貝などいろいろな種類の化石や、オーライトoolite(鮞状(じじょう)岩)とペレットpelletなどと、それらのすきまを埋める石灰質の泥(ミクライトmicrite)あるいはすきまに晶出した方解石の膠結(こうけつ)物(スパライトsparite)がある。これらの量比は、石灰岩の形成環境を反映しているので、石灰岩の分類に用いられる。たとえば、石灰泥が洗い出されて減少し、スパライトで膠結され、化石などが破砕あるいは円摩され淘汰(とうた)されていれば、石灰岩形成の場の水流がより強かったことがわかる。砕屑性の石灰岩では、砕屑岩と同じように、石灰礫(れき)岩(石灰質ルーダイトcalcirudite)、石灰砂岩(石灰質アレナイトcalcarenite)、石灰泥岩(石灰質ルータイトcalcilutite)に分けられる。

 地質時代全般を通して、石灰岩は古生代のオルドビス紀からシルル紀、石炭紀からペルム紀(陸成層には二畳紀を使うことがある)、および中生代のジュラ紀から白亜紀にかけてよく発達している。日本では古生代のシルル紀、石炭紀後期からペルム紀の石灰岩が多く、琉球(りゅうきゅう)列島の第四紀層にも隆起サンゴ礁として発達している。いずれも化石を多く含み、地質時代の決定に利用されるほか、堆積当時の古環境や生物界のようすの推定に役だつため、地史学や古生物学のみならず、古海洋や地球環境の変動を考察する分野でも重要である。日本では、特定の時代を示すものとして、古生界のフズリナ石灰岩、新生界のレピドシクリナ石灰岩が知られている。日本の石炭紀・ペルム紀石灰岩のほとんどは、熱帯域でサンゴ礁として形成されたもので、海洋プレートの移動に伴って海溝まで運ばれ、後の時代の付加体に取り込まれたものである。

 石灰岩の利用面は広く、いわゆる大理石として石材に利用されるほか、セメント、カーバイド、肥料などの原料や製鉄などに大量に使われている。これら工業用原料として利用される場合には石灰石とよばれている。また世界の石油埋蔵量の約半分は石灰岩中にあるといわれ、含油層としても重要である。

 日本のおもな産地として、南部北上山地長岩、足尾山地葛生(くずう)、関東山地武甲(ぶこう)山、新潟県糸魚川(いといがわ)市青海(おうみ)、岐阜県大垣市赤坂町、高知県鳥形(とりがた)山、広島県帝釈(たいしゃく)峡、山口県秋吉台、福岡県平尾台などがある。

[斎藤靖二]

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改訂新版 世界大百科事典 「石灰岩」の意味・わかりやすい解説

石灰岩 (せっかいがん)
limestone

炭酸カルシウムCaCO3が重量で50%以上を占める堆積岩。色は白色から黒色までさまざまである。石炭質の殻をもつ生物遺体(ユウコウチュウ,石灰藻,サンゴ,貝など)の集積または化学的沈殿により形成された原地性のものと,石灰質物質が二次的に運ばれて堆積した非原地性のものとがある。後者が量的には多く,それらは砕屑岩として扱うことができ,粒径により石灰レキ岩,石灰砂岩,石灰シルト岩,石灰泥岩に区分される。また,微晶質方解石基質(マイクライトmicrite)をもつものと,粗粒方解石により膠結(こうけつ)されたもの(スパーライトsparite)に大別され,構成粒子(炭酸塩砕屑片,オーライトoolite,生物遺骸片,ペレット)の量比により,それぞれ細分される。石灰岩の分類には多くの提案があり,一致をみていない。また石灰岩は化石を多く含むことから地質時代の決定に有効で,形成環境が限定されていることから,古地理の復元に重要な役割を果たしている。

 石灰岩はセメント,石灰,製鉄工業に利用価値が高く,鉱石は石灰石と呼ばれる。一般にCaCO3が80%以上のものが資源として利用される。日本の石灰岩は大部分が白色を示し,古生代(おもに二畳紀)のものがほとんどで,一部が中生代のものである。外国の石灰岩が層状(原地性)で陸源砕屑物を多く含むのに対して,塊状(原地性)で,それらをほとんど含まず,したがって純度も高い。日本では唯一自給できる資源で,CaO45%以上のものが採掘されている。

 石灰岩は変成作用をうけると容易に再結晶して方解石の集合体(大理石)にかわる。また接触変成により,スカルンと呼ばれる種々の鉱物ができ,鉄,銅,亜鉛,鉛などの鉱床が形成される。石灰岩は水に溶けやすいことから,侵食されて特異なカルスト地形をつくりだす。また地下には鍾乳洞が形成され,鍾乳石や石筍(せきじゆん)が発達する。
執筆者:

石灰岩は建築用石材として古くから広く利用されている。エジプトピラミッドが古第三紀の示準化石であるヌンムライト(貨幣石)を含む石灰岩で造られていることはよく知られている。ヨーロッパやアメリカには大理石よりやや軟質の石灰岩が広く分布し,フランスやイギリスでは教会や宮殿をはじめ広く石造建築の材料として使われてきた。アメリカのインディアナ州に産するこの種の石灰岩はニューヨークエンパイア・ステート・ビルやロックフェラー・センターの各ビルの外装に使われて有名になった。また今日,大理石と呼ばれる石材の大半が非結晶質の石灰岩であり,石灰岩であればこそビルに張られた石からアンモナイトその他の化石が発見されて話題をにぎわすのである。縞状に細孔が並ぶトラバーチンは世界の至るところのビルに使われているが,これは湧泉など温水の中でできた石灰岩である。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「石灰岩」の意味・わかりやすい解説

石灰岩【せっかいがん】

堆積岩の一種。炭酸カルシウムCaCO3を主成分とし,ふつうは白〜灰色の緻密(ちみつ)な非顕晶質岩石。顕微鏡で見ると微細な方解石の集合であることがわかる(大理石)。成因上,生物岩の場合と化学岩の場合がある。前者では有孔虫,サンゴ,貝殻,石灰藻などの遺体からなり,それらを化石として多数含む。後者は海水中の石灰分がなんらかの原因で沈殿した場合で,緻密な石灰岩ができる。日本は石灰岩の埋蔵量が豊富で,採掘された鉱石は石灰石と呼ばれ,セメント工業,生石灰製造,製鉄,ガラス工業,カーバイド工業などの原料として大量に利用。
→関連項目キャップロック石灰肥料油層

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「石灰岩」の意味・わかりやすい解説

石灰岩
せっかいがん
limestone

炭酸カルシウムを主成分とする堆積岩の総称。石灰質の殻をもつ生物の遺骸を主とする生物起源と,化学的沈殿によるものがあり,普通,両者が混っている。生物起源のものは,化石の種類により,貝殻石灰岩,有孔虫石灰岩,サンゴ石灰岩,フズリナ石灰岩などと呼ぶ。化学成分上,マグネシウムがカルシウムと置き換えられた程度により,苦灰質石灰岩 magnesian limestone,白雲岩質石灰岩 dolomitic limestoneと呼ばれる。ヨーロッパでよく用いられる白亜は灰色,灰白色の細粒柔軟な泥灰質の石灰岩の一種で,イギリス,フランスの白亜系に多い。近年石灰岩の組織の研究が進み,石灰岩の生成機構も次第に明らかになりつつある。純化学的に炭酸カルシウムの沈殿が起るのは,炭酸カルシウムが飽和状態にある熱帯の浅海で,水温,塩分濃度が高く,海水がかく乱されて,長さ1~10 μm ぐらいの核になる結晶ができる条件が好適といわれる。これはメキシコ湾口のバハマバンクで判明したことで,地質時代の石灰岩の堆積環境も類似のものとみられる。日本の石灰岩は大部分古生代後期の地層に含まれ,盛んに採掘されている。外国では石灰岩が石油の母岩となるものが少くない。工業,化学的分野では,普通,石灰石と呼ぶ。

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化学辞典 第2版 「石灰岩」の解説

石灰岩
セッカイガン
limestone

炭酸カルシウムを主成分とするたい積岩.化学的沈殿および生物遺骸の集合によってつくられる.このような累積した石灰岩が,その後,流水により別の場所に移動すると粒度により,石灰れき岩,石灰砂岩,石灰シルト岩などに区別される.生物遺骸で浅海や深海に堆積したものは石灰質堆積物とよばれる.また,主として化石からなる石灰石は,化石の種類に対応して,サンゴ質石灰岩,貝殻質石灰岩,有孔虫質石灰岩などとよばれる.有用地下資源としてみるときには,石灰石とよぶ.日本では岩手県岩泉,埼玉県武甲山,奥多摩,山口県秋吉台,四国脊梁(せきりょう)山地などが有名.主として二畳紀の堆積物でCaO 54~55% のものが多い.セメント原料,製鉄用,肥料原料,そのほか,多方面に使用されている.[別用語参照]生石灰

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岩石学辞典 「石灰岩」の解説

石灰岩

一般には大部分が炭酸カルシウム(CaCO3)からなる層状の堆積岩をいうが[Woodward : 1695, Arkell & Tomkeieff : 1953],誤って大理石を透輝石石灰岩や透角閃石石灰岩などと呼ことがある[Eskola : 1922].成因上では有機的起源のものと化学的に沈澱したものがある.ラテン語のlimusは泥の意味.

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世界大百科事典(旧版)内の石灰岩の言及

【地形】より

…氷食輪廻は雪線を浸食基準面とする山地氷河の浸食による地形変化の系列をいい,海食輪廻は海岸線付近の地形が波浪基準面にまで波食によって変形させられ,陸地が蚕食される変化の系列をいう。カルスト輪廻は石灰岩地域における独特な溶食作用による地形変化の系列で,浸食基準面はその地域の地下水面である。乾燥輪廻は乾燥地域の盆地床を浸食基準面として進む地形変化の系列で,機械的風化が著しく布状洗食や風食が卓越的で,急斜面が平行的に後退し,ペディメントが形成され,島状丘陵(インゼルベルク)が残丘として残る特色がある。…

※「石灰岩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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