化学辞典 第2版 「ニトロン」の解説
ニトロン
ニトロン
nitron, nitrone
【Ⅰ】nitron.C20H16N4(312.37).1,4-ジフェニル-3-アニリノジヒドロトリアゾールを穏やかに酸化して生成するメソイオン化合物.N″-アニリノ-N,N′-ジフェニルグアニジンとカルボン酸との反応によっても得られる.黄色の板状晶(エタノールから再結晶).分解点189 ℃.クロロホルム,アセトン,酢酸に可溶,水に不溶.双極子モーメント7.2 D(ベンゼン).ニトロンは酢酸水溶液中で硝酸のイオンNO3-と難溶性の沈殿を生成するので,硝酸塩の重量分析に用いられる.同様に塩素酸イオン,過塩素酸イオン,レニウムイオンなどの定量および定性分析に用いられる.[CAS 487-88-7]【Ⅱ】nitrone.次式のような一般式をもつアゾメチンN-オキシドの総称名.
アルデヒドと置換ヒドロキシルアミンとの脱水縮合,オキシムのハロゲン化アルキルによるN-アルキル化などにより合成する.また,ホルムアルデヒドにフェニルヒドロキシルアミンを反応させるとビスニトロンが生成する.
ニトロンは1,3-双極化合物(1,3-dipolar compound)であり,オレフィンに環状付加してイソオキサゾリジンをつくる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報