日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヌペ」の意味・わかりやすい解説
ヌペ
ぬぺ
Nupe
西アフリカのナイジェリア中西部、ニジェール川流域の南北に広がる地域に居住するネグロイド系民族。人口約100万。コンゴ・コルドファン(ニジェール・コンゴ)語族クワ系諸語に属する言語ヌペ語を話す。雑穀やイネ、ヤムイモなどを主作物とする農耕民であるが、狩猟や漁労も行う。またヌペの一支族ケデは、ニジェール川主流に沿って居住し、流域の漁業権と河川運輸を独占し、独特の河川国家ともいうべき組織を形成した。ヌペは、15世紀ごろ、伝説的な英雄ツォエデによって統一されたといわれ、エツ(王)・ヌペとよばれる王をいただく。王国は18世紀後半に最盛期を迎えたが、19世紀に入ると、北方のイスラム教徒の牧畜農耕民フルベ(フラニ)のジハード(聖戦)がこの地にも及び、フルベの支配下に置かれた。ヌペ社会は男性を中心に組織されているが、女性は商業活動に従事することによって、男性に勝る経済力をもつ。このため、男性と女性の間には、しばしば軋轢(あつれき)が生じ、女性は妖術(ようじゅつ)師とみなされる。
[渡部重行]