日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジハード」の意味・わかりやすい解説
ジハード
じはーど
jihād
一般にはイスラムを広めるため、または防衛のための戦い、すなわち「聖戦」のことをいう。原義は「(神の道のために)奮闘努力すること」であるが、古くから、異教徒に対する戦争と解釈されてきた。イスラム法においては、ジハードはムスリム共同体に課せられた宗教的義務であり、それを遂行する具体的方法に関しては詳細な規程がなされている。歴史的には、初期のアラブの大征服だけではなく、十字軍に対する戦争や、オスマン朝のヨーロッパへの進出がジハードとして戦われた。スーフィズム(イスラム神秘主義)においては、異教徒に対する戦いを「小ジハード」というのに対し、自己の欲望に対する戦いは「大ジハード」とよばれて、より高く評価された。近現代におこった反帝国主義、イスラム復古主義、原理主義では、イスラム世界防衛のため実際に武器を持って戦うジハードがふたたび強調されている。
[竹下政孝]