翻訳|holy war
古代オリエントに一般的な信仰によると,神々がみずから戦争を指揮して戦い,勝利を収めると考えられた。シュメール人は,都市国家間の争いを各都市の所有者である神々の争いと考え,アッシリア人は,アッシュール神が遠征の命令を下し,王とともに戦場で戦うと信じた。古代人にとって,敵に勝つことは単なる世俗的事件ではなく,自然・人間界の秩序を破壊する悪の力を克服することを意味した。ウガリト神話は,主神エールやバアルが神々の集会を指揮して混沌の力と戦い,勝利を収めたことを語る。旧約聖書においても,ヤハウェは〈いくさびと〉あるいは〈万軍の主〉と呼ばれ,イスラエル人と外敵の戦いは〈ヤハウェの戦い〉とされる。また,敵に属するものはすべて神に〈献げられたものḥērem〉として,人であれ動物であれ全滅させることが聖戦の定めである。この聖戦思想は,黙示文学では,神と悪魔の間で戦われ,神が勝利する終末戦争(ハルマゲドン)になる。なお,イスラムのジハードも一般に〈聖戦〉と訳される。
→ジハード
執筆者:石田 友雄
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…こうして,力ずくで平和を強制することが不可能だったことから,最後に,限定された戦闘の休止,すなわち毎週2ないし4日間(水曜の夜から月曜の朝まで)と,復活祭などの典礼祝日の期間に戦闘を禁止する〈神の休戦trève de Dieu〉が出現する。やがてスペインやドイツにも入ってゆくこの神の休戦は,キリスト教徒間の戦闘を全面的に排斥するまでにいたり,こうしてキリストの戦士として教化された騎士たちは,異端や異教徒などのキリストの敵に対する聖戦を使命とするようになって,神の平和はアルビジョア十字軍や聖地十字軍に道を開く。しかし他方で,神の平和そのものは,12世紀に入って諸侯や国王の権威が強化されるとともに,諸侯の平和(ラント平和令)や国王の平和のなかに取り込まれてゆく。…
…イスラム世界(ダール・アルイスラームdār al‐Islām)の拡大または防衛のための戦いをいい,一般に〈聖戦〉と訳す。アラビア語の元来の意味は,〈定まった目的のための努力〉である。…
※「聖戦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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