ハイデルベルク学派(読み)ハイデルベルクがくは(その他表記)Heidelberger Schule[ドイツ]

改訂新版 世界大百科事典 「ハイデルベルク学派」の意味・わかりやすい解説

ハイデルベルク学派 (ハイデルベルクがくは)
Heidelberger Schule[ドイツ]

20世紀の10年代から20年代にかけて,ドイツのハイデルベルク大学を舞台に,主として精神病理学の分野で活動した研究者の集団。ウィルマンスK.Wilmanns(1873-1945),グルーレヤスパースマイヤー・グロースW.Mayer-Gross(1889-1961),ベーリンガーK.Beringer(1893-1949)らが主要メンバーである。その精神的中心はヤスパースで,彼が《精神病理学総論》(1913)で展開した現象学や了解心理学の方法は,それまで外側からの客観的記述にとどまっていた精神分裂病(統合失調症)や躁うつ病など内因性精神病の研究を,その内的体験について解明する方向へと推し進めた。こうした活動も30年代に入るとナチスによって禁圧され,メンバーは四散し,壊滅的打撃をこうむる。学派が再建されるのは第2次大戦後で,ヤスパースを師と仰ぐK.シュナイダーや,とりわけバイヤーW.R.von Baeyer(1904- )が中心となって人間学的方向をひらき,〈新ハイデルベルク学派〉と呼ばれる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のハイデルベルク学派の言及

【精神医学】より

…20世紀に入るとともに,精神分析のS.フロイト,それを容認して力動的な症状論を展開するE.ブロイラー,現象学の導入により方法論を整備したK.ヤスパースら,新たな勢力が台頭して,19世紀の精神医学に深さと広がりと高さを加える。これらがヨーロッパ全域で豊かな開花をみせるのはとりわけ20世紀の20年代で,ヤスパース,H.W.グルーレ,マイヤー・グロースW.Mayer‐Grossを擁するハイデルベルク学派,R.ガウプとE.クレッチマーを擁するチュービンゲン学派,そしてクロードH.ClaudeとH.エーを中心とするフランスのサンタンヌ学派などがその重要な拠点となった。ただし,これらの開花が現代精神医学の繁栄をもたらすまでには,30年代から40年代半ばにかけてナチス体制下のドイツ精神医学が精神病者をガス室へ送りこむのに荷担するというあの暗い歴史が介在しているのを忘れることができない。…

※「ハイデルベルク学派」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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