改訂新版 世界大百科事典 「ハンスフォルト」の意味・わかりやすい解説
ハンスフォルト
Wessel Gansfort
生没年:1419ころ-89
オランダの人文主義者。ウェッセルJohannes Wesselともいう。生地フローニンゲンの市立学校,ズウォレの共同生活兄弟会の学校で学んだのち,そこで教える。1449年以後ケルン,ハイデルベルク,パリの諸大学に留学して学位を得,神学,哲学,ギリシア,ヘブライ,カルデア,アラビアの諸語,医学などをきわめた。その博識により〈世の光Lux mundi〉と呼ばれたが,スコラ哲学において実念論から唯名論的立場に移行したため,反対者から〈矛盾の博士Magister contradictionum〉とも呼ばれた。各地を旅行して人文主義者と交わり,75年帰国してズウォレその他に住み,晩年をフローニンゲンの聖クララ修道院で過ごした。彼は聖書に基づき,教皇,公会議の無誤性,贖宥,煉獄,聖人崇拝などに関するカトリック教会の教義を批判し,ルターに大きな影響をあたえ宗教改革の先駆者となった。化体説を否定しなかったが,聖体のサクラメント(秘跡)よりもデウォティオ・モデルナ(〈新しい信仰の意〉)の神秘主義による神と魂の合一を重視した。
執筆者:栗原 福也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報