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編物 あみものknitting

翻訳|knitting

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

編物
あみもの
knitting

広義にはすべての編組物をさす工芸の一つ。起源は古く旧石器時代にさかのぼり,糸,わら,,竹などを使って,手や針でさまざまなものがつくられてきた。紐で編んだ網が最も初期のもので,のちに籠,敷物などの生活用具や衣類がつくられた。日本でもすでに縄文時代早期に漁網が編まれている。また後期に網状の敷物,晩期に籠,むしろが出現し,奈良時代のものは正倉院宝物に多くみられる。今日,一般には,糸,毛糸,紐などを,鉤針または2~4本の棒針を用いて編み目を連続させて布状のものを作り上げる手芸を編物といい,レースも含まれる。技法,用具には多くの種類があり,また手編,機械編の別がある。作品は主として服飾品が多いが,室内装飾品などもつくられる。ほかに工業的に動力機械を用いるものがあり,靴下手袋セーターなどのメリヤス類と,織物状のトリコットジャージーなどもある。

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デジタル大辞泉の解説

あみ‐もの【編(み)物】

毛糸・綿糸などを編み棒・編み機などで編んで衣類・装飾品などを作ること。また、作ったもの。

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百科事典マイペディアの解説

編物【あみもの】

織物が経糸(たていと),緯糸(よこいと)で織られるのに対し,編物は1本の糸で編まれ,毛糸,綿糸,絹糸,化繊糸などの撚りの少ない糸が用いられる。保温性,伸縮性にすぐれ,軽くて着心地がよいため,セーター,下着,手袋,靴下,帽子マフラーなどに広く用いられる。

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世界大百科事典 第2版の解説

あみもの【編物】

1本ないし2本以上の,繊維束など細長い素材を一定のシステムで組み合わせ,面的な広がりをもつ製品を作る手工芸。編物ということばの意味は必ずしも明確ではなく,織機出現以前は織物とほとんど不可分の関係にあった。〈編み〉に機械的工夫を加えたものが〈織り〉だともいえよう。
考古学からみた編物】
 人類は古くから編物を利用していたらしく,考古学的には網,籠(バスケット類),蓆(莚)(むしろ),網代などが確かめられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

編物
あみもの

糸状の素材を用いてループ状にし、そのループを連続しながら一つの形をつくりあげること、およびその製品をいう。編むという意味は、手編からきている古代英語のシンタンcynttanから転じた英語のニットknitをさす。また編成してできたメリヤスという語は、スペイン語のメディアスmedias、あるいは、ポルトガル語のメイアシュmeiasから転訛(てんか)したといわれている。ニットとは編物、メリヤス製品全体の総称であり、メリヤス製品とは、工業用機械で編まれたものをさす。なお、編むという行為の人類学的な解説は「編む」の項を参照されたい。
 編物は伸縮性に富み、弾力性がある。保温力に優れ、ループ編成のため多孔性となり通気性があり、編み直しができる。素材の組合せ、配色法や技法など、創意工夫により、手芸的な小物から下着類、和服類、被服全般、室内装飾まで、あらゆる作品ができる。[河合貴代美]

種類

手編と家庭用編機による機械編とに大別でき、手編には、棒針編、かぎ針編、アフガン編がある。棒針編は、表編と裏編が基本となって、これらの組合せ、応用により各種の模様編ができる。かぎ針編は、鎖編、細編(こまあみ)、長編などが基本となる。アフガン編は、表編目、裏編目が基本となる。機械編は、編目の移動、部品の使用などにより、レース模様、編込み模様、引き上げ、すべり目模様や、別素材を織り込んだスレッド編、その他両板機やゴム機によるものなど、さまざまな編地がつくられる。[河合貴代美]

西洋での歴史

編むことの起源は、はっきりしていないが、かなり古く、網として狩猟や漁に用いられたようである。ピラミッドの遺品のなかから発見されたレース編はエジプト王朝(前3000~前525)のもので、現存する最古のものと思われる。アフリカ、ヨーロッパ各地で発見されたコプト人の帽子には、りっぱな模様編があり、現在の編物に近い。2本棒針を使用する編物は、13世紀にイタリア、フランスに定着し、14~16世紀にはフィレンツェやパリに編物ギルド(同業組合)が結成され、宗教団体の後援で編物の黄金時代を迎えた。
 このころのヨーロッパ各国の編物の特色として、次のような点があげられる。
スペイン バスク地方ではフェルト化したベレー帽。
フランス 美しいレース編の長靴下。
イタリア 金糸銀糸の浮出し模様。
イギリス 芸術的な編物。
オーストリア、ドイツ 縄編や刺しゅう。
オランダ 花や鳥獣の図案の浮出し編。
 1589年、イギリスの牧師ウィリアム・リーが、ひげ針による足踏式靴下編機を発明、これが最初の編機であり、手編の時代から機械編の時代へ第一歩を踏み出すきっかけとなる。その後、編物機械の改良が行われ、イギリスを中心に発達し、産業革命の要因の一つとなった。19世紀には、イギリスのマッシュー・タウンゼントが、ひげ針より高能率のベラ針を考案し、これによって編物工業は画期的発展を遂げることになる。今日のニット編機のほとんどがこのベラ針を用いていることからもわかるように、意義深い発明であった。一時影を潜めていた手編は、クリミア戦争(1853~1856)のおりに軍需用の帽子、靴下、手袋が婦人たちによって編まれ、一般家庭でも、シャツ、ペチコート、ジャケットなどが編まれるようになる。第一次世界大戦により、編物の需要が増大し、編物雑誌なども発行され、下着だけでなく上着までつくるようになる。こうして1930年代には、パリのファッション界にも編物が登場し、目覚ましい発達を遂げた。[河合貴代美]

日本での発達

16~17世紀キリスト教の伝来とともに、スペインからメリヤス編の手法が渡来し、元禄(げんろく)年間(1688~1704)に長崎でメリヤス製造が行われた。江戸末期には外国人宣教師から技術が伝えられ、明治の初期に、手回し式靴下編機を輸入したのが、日本の機械編の初めといわれている。欧風文化を謳歌(おうか)した鹿鳴館(ろくめいかん)時代に、レース編が入ってきたため、上流社会にジャケットや肩掛けが流行した。
 日清(にっしん)・日露戦争では、軍需品として多量のメリヤス製品を必要としたことから、メリヤス産業が急速な発達を遂げた。1923年(大正12)、萩原(はぎわら)まさ(1883―1974)がガータ編器を発明。これをきっかけに、手編機はさまざまな研究が加えられ、現在までに目覚ましい普及をみせた。一方、手編も、主婦や若い女性の間で愛好されている。現在日本の編物は、多種多様の素材、技術の研究、編物出版物の発展、ファッション感覚など、世界の水準を抜く進展ぶりをみせている。1963年(昭和38)11月、財団法人日本編物検定協会が結成され、編物技能検定(毛糸は1~5級、レースは1~3級)が毎年9月に行われている。[河合貴代美]

伝統的デザイン

ここで世界各地に伝わる伝統的デザインの代表をあげてみる。
(1)ガンジー・セーター イギリス海峡の南西端にあるガンジー島(イギリス領)から生まれたフィッシャーマン・セーター。鉄紺の太めの糸で編まれた単純な模様の筒形セーターで、実利的なデザインの標準。
(2)ジャージー ジャージーは、ガンジー島の隣の島の名。日本では、外衣用編地をジャージーとよぶ傾向にあるが、ジャージーという用語の起源は、この島の糸で編まれたスモック風のメリヤス編セーターであるといわれている。
(3)アラン模様 ガンジー・セーターの流れは、アイルランドの西方にあるアラン諸島に伝わり、重々しく浮彫りされたデザインに発展した。
(4)ロピー・セーター アイスランドのロービングヤーンで編まれた、丸ヨークのセーター。ブラック・シープとよばれる色のついた羊の毛を、手つむぎでわずかに撚(よ)りをかけた極太毛糸がロービングヤーン。ロピーとは、アイスランド語でロービングのこと。
(5)フェアー島の編込み フェアー島はスコットランドの北の島で、はでな毛染め糸を使った多色配色の総編込みが特徴。同じ模様を繰り返さないという。
(6)ノルディックの編込み 編込み模様の流れは、地中海からスペインを通り、デンマークやノルウェーに伝わった。具象的な図案や幾何学模様が多く、形はスモック風の直線形。
(7)カウチン・セーター カナダの南西部に住む狩猟民族カウチン・インディアンの労働着。雷鳥や鹿(しか)、鯨など、大胆な図案が特色。
(8)アーガイルチェック スコットランドの西、アーガイル地方に伝わるタータンチェックを斜めに使ったのが始まり。[河合貴代美]

素材

編物の素材となる糸は、天然繊維と化学繊維に分けられる。これらの種類や特性を知り、用途に応じて素材を選択する。天然繊維は動物繊維と植物繊維に分けられ、動物繊維には羊毛(ヒツジ)、カシミヤ(ヤギ)、アンゴラ(ウサギ、ヤギ)、キャメル(ラクダ)、アルパカ(ラマ)、絹(カイコ)などがある。羊毛は、比較的軽く保温性、吸湿性に優れ弾力があるので、もっとも多く使われている。植物繊維は木綿、麻、チョマ(ラミー)、ヤシ(椰子)などがあり、他の繊維との混紡もある。伸縮性は羊毛より劣るが、保温性が高く、吸水性も大で、じょうぶである。化学繊維には再生繊維、半合成繊維、合成繊維、無機質繊維があり、レーヨン、キュプラ、アセテート、ナイロン、テトロンなどである。それぞれに特性があるが、いずれも摩擦に強く、速乾性に優れ、虫害を受けない。
 手編糸は年々研究され、種類や太さも多種多様の糸が市販されている。一般に毛糸の太さは極細、中細、並太などとよび、太さと撚りによって決められている。糸の太さ、細さを表す単位を番手といい、糸の長さと重さの関係を基準としたものである。毛糸の場合、1グラムの羊毛を1メートルの長さに引き伸ばしたものが1番手、20メートルに引き伸ばしたものは20番手である。20番手の糸を2本撚り合わせたものが極細で、2/20と表す(分母は番手、分子は撚り)。[河合貴代美]
糸の撚り
単糸(たんし)(片撚り糸)は、それぞれの番手の糸1本に下撚りをかけたもの。双糸(そうし)は、単糸を2本引きそろえ、単糸と反対の方向に撚ったもの。極細は、双糸で引きそろえる単糸の本数で、3本なら「みっこ」、またはスリープライ、4本なら「よっこ」、またはフォープライといわれる。[河合貴代美]
撚りの方向
S撚り(右撚り)とZ撚り(左撚り)とに分けられ、単糸がZ撚りならば、双糸はS撚りになる。手編毛糸は、単糸はZ撚りで、2本から4本あわせてS撚りにする。[河合貴代美]
意匠撚糸
飾り糸(ファンシーヤーン)ともいい、2本以上の糸を撚り合わせるとき、糸の太さ、撚りの程度、方向、弾力、材質、形態、色など、いろいろ変化させて特徴のある外観をもたせた糸。[河合貴代美]

編目記号

編物愛好家が増加するとともに、図書出版物も著しく発展した。それに伴って1955年(昭和30)に編物の表示記号がJIS(ジス)(日本工業規格)によって制定、統一された。5年経過ごとに審議され確認、改正、廃止される。
 家庭用編機編目は表目| 裏目― かけ目○ 右上2目一度 左上2目一度などと表示し、23種ある。
 棒針編のものは22種、かぎ針編は、鎖編目 細編目× 中長編目 長編目と表示し、13種(記号数40)である。
 アフガン編では、鎖編目 表編目| もどり編目~ 裏編目― かけ目○と表し、16種ある。[河合貴代美]

手入れ

ドライクリーニングするのがよい。家庭で洗濯する場合は、素材の種類を確かめて洗剤を選ぶ。ウールの編物を家庭で洗う場合は以下のようにする。
(1)ぬるま湯に中性洗剤を溶かし、製品を裏返して浸し、軽く押し洗いをする。汚れのひどいところは、その部分に洗剤をつけ、手のひらにのせて汚れをたたき落とす。ぬるま湯を2~3回取り替えて、すすぎの最後に柔軟仕上げ剤を加えるか、酢を5~6滴落とすとふっくらする。
(2)タオルで包んで押し絞りをするか、脱水機で軽く脱水して水気をとり、形を整え、風通しのよいところで、板などの上に置いて陰干しにする。ハンガーや竿(さお)に干すと、水の重みで形くずれする。また、直射日光に当てると毛糸が傷み、白毛糸は黄変するので注意が必要。
(3)アイロンは、よく乾いてから各部分の寸法にあわせて形を整え、繊維や編地によって温度を調節し、蒸気をむらなく当てる。
 日常の手入れは、着用後、ほこりをたたき、襟、袖口(そでぐち)、胸元などの汚れはベンジンでふき取る。ときどきアイロンを当てて着ると、形くずれを防ぐことができる。子供物は、傷みが激しいので、早めにほどいて糸を繰り回すか、糸を足して編み直したほうが経済的である。
 なお家庭用編機は、速度が早く編めるので、何枚も編む必要のあるときや、職業用として効率よく便利である。ゴム機(リブ機)、両板機もある。[河合貴代美]
『菊地正監修『手あみ技法のすべて』(1981・シルバー編物研究会) ▽河合茂子監修『レース編み絵本』(1981・主婦と生活社) ▽伊藤英三郎著『ニット総合事典』(1981・チャネラー)』

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