改訂新版 世界大百科事典 「バーラタナティヤム」の意味・わかりやすい解説
バーラタ・ナティヤム
bharata natyam
インドの代表的な舞踊の一つ。踊手が1人でいろいろの役を演じ踊る形式をいい,現在タミル・ナードゥ州南東部,とくにチェンナイ市(旧マドラス市)を中心に行われている。デーバダーシーdevadāsī(神の召使)と呼ばれる,ヒンドゥー教の寺院に所属する女性によって伝承されてきたが,封建制度の発達につれ,君主や土侯の宮廷でも踊られるようになった。しかし,デーバダーシーがついには遊女のようなものになってしまい,舞踊は衰退した。20世紀の初頭,古文化再認識の動きに伴って,バーラタ・ナティヤムは寺院を離れ,舞台芸術として再生し,一般の人々がこの舞踊を学び楽しむようになった。ヌリッタnṛttaという純粋舞踊とアビナヤabhinayaという表示的な意味をもつ舞踊の二つの要素から構成されており,ヌリッタのみの曲,アビナヤのみの曲,両方の要素をもった曲がある。踊手はアビナヤの部分で自己を最高に表現するといわれている。最近では男性の踊手も少数ではあるが現れている。
→インド舞踊
執筆者:大谷 紀美子
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