日本大百科全書(ニッポニカ) 「パドマーワト」の意味・わかりやすい解説
パドマーワト
ぱどまーわと
Padmāvat
インドのアワディー語スーフィー詩人ジャーエシーの恋愛詩。1521年ごろの作。平易な大衆の会話用語を用い、インドでよく知られた話題と歴史事実とを織り交ぜた、スーフィー恋愛詩中の最高傑作。チッタウルの王(霊魂)がスィンハル島の王女パドマーワティー(神)を求め、幾多の苦難を越え、鸚鵡(おうむ)(グル)の導きによって彼女を獲得する。彼女の美貌(びぼう)のうわさを聞いて横恋慕したデリーの王が、チッタウルを攻めるが失敗して和を結び、奸計(かんけい)によってチッタウルの王を虜(とりこ)にする。しかし、王は家臣たちに救出され、チッタウルに帰国後、留守中失礼なふるまいをしたデリーの王を攻めこれを殺すが、自らも傷つき死ぬ。パドマーワティーは第一夫人とともに王に殉じて焚死(サテイー)をする。この死によって、魂は天国で永遠に神に仕える至福を得るのである。このようにスーフィズムを説くものではあるが、むしろ美しい恋愛詩として高く評価されている。
[土井久弥]