改訂新版 世界大百科事典 「パピエマシェ」の意味・わかりやすい解説
パピエ・マシェ
papier mâché[フランス]
パルプ(紙パルプ)にチョーク(白亜),接着剤,砂などを混合した,流動状の素材をいう。これを鋳型に流し込み,加熱して固形化する。主として家具や調度の部材用に使われ,表面をなめらかに磨き,漆や塗装を施す。さらに装飾効果を高めるために,青貝などの象嵌や蒔絵などを施すこともある。このような素材は元来東洋起源のものであるが,西洋では17世紀にはじめてフランスに現れ,イギリスには17世紀後期に導入された。その後,1772年にバーミンガムのヘンリー・クレーは数枚の特殊な紙に接着剤を加えて加熱し,自由な形に成型したパネルを考案し,その特許を取得した。この素材で製作されたものは〈ペーパー・ウェアpaper ware〉とよばれていたが,バーミンガムのジェンネンズ・アンド・ベトリッジ商会が1816年ころからこの素材に〈パピエ・マシェ〉という名称を与えた。パピエ・マシェは30年代には著しく改良され,耐熱性も強くなり,ビクトリア朝時代の複雑な曲面や曲線を必要とする椅子やテーブルなどの部材として広範に使用された。同じころアメリカでもパピエ・マシェの家具が流行した。
執筆者:鍵和田 務
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報