パントミムス(その他表記)pantomimus

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パントミムス」の意味・わかりやすい解説

パントミムス
pantomimus

黙劇。古代ローマ時代に作られた一種演芸神話題材を取り,器楽演奏と合唱に合せて俳優無言で演じたり踊ったりする。俳優は1人で,仮面の交換によって多くの役を演じた。この種の演芸は古くからあったが,前 22年にキリキア出身のピュラデスが,合唱と器楽を伴った大規模な形に仕立て上げた。彼の作は誇大かつ情熱的で,悲劇に似ていたが,アレクサンドリア出身のバチュルスは喜劇サチュロス劇に近い軽いテーマを演じて,人気を博した。

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世界大百科事典(旧版)内のパントミムスの言及

【パントマイム】より


[パントマイム前史]
 pantomimeという言葉は,その語源をさかのぼれば,古代ギリシア語のpantōs(すべて(に))とmimos(ものまね)の合成語pantomimosであり,この言葉自体は古代ギリシアの多くの文献に見ることができる。しかし,このような〈ものまね〉あるいは〈呪術的模倣所作〉とでも称すべきものは,周知のように,演劇一般の〈始源的形態〉にほぼ共通して見ることができる重要な一構成要素であり,そのようなものの一種として,古代ギリシアにおいては先のmimos(あるいはpantomimos)という言葉で表現される〈ものまね〉を中心とした座興的な雑芸(これを演劇史で〈ミモス劇〉などとも呼ぶ)が行われていたことは事実であるにせよ,それが今日のパントマイムに通じる一つの独立した芸能ジャンルであったとは言いがたく,演劇史では,ふつうパントマイムの起源を,古代ローマのパントミムスpantomimusに求めることが行われている。このパントミムスは,ギリシア期における前記の雑芸と比較するならば,その〈ものまね・身ぶり〉的要素が特に取り出されまた強調されて,一つの芸能ジャンルとなったものであり,紀元前後からおよそ5世紀の初めに至るまで,その卑俗性に対するキリスト教会の〈道徳的非難〉やトラヤヌス帝による禁止令等があったにもかかわらず,古代ローマの人々には大いに愛好されて,ピュラデスPyladesやバテュルスBathyllusをはじめとする優れたパントミムス俳優もあらわれた。…

【ローマ演劇】より

…女優が登場するのはミムスmimus劇(ものまね芝居)やきわめて後の喜劇ぐらいで,ごく限られたものであった。
[ローマ演劇のその後]
 文学的な芝居は徐々に衰微していったが,ミムス劇やパントミムスpantomimus劇(せりふをまったくなくした黙劇。民衆的な雑芸として生き続け,今日のパントマイムにつながる)などはなおしばらく大衆の娯楽として続いた。…

※「パントミムス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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