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仮面 かめんMask

翻訳|Mask

7件 の用語解説(仮面の意味・用語解説を検索)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

仮面
かめん
Mask

紙,土,木,布,皮,金属などで作った面。主として宗教儀式や演劇に用いられる。民族,人種,時代により多種多様のものがあるが,その表現する内容から動物仮面,人面仮面,死者仮面,霊鬼仮面,神祇仮面などに分けられ,また使用目的から狩猟用,戦闘用,祖先祭礼用,農耕儀礼用,成人式用,雨ごい用,演劇用仮面などに分けられる。

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デジタル大辞泉の解説

か‐めん【仮面】

人間・動物などの顔をかたどって素顔にかぶるもの。マスク。
本心や素性を隠すもの。「とりすました人の仮面をはぐ」

出典|小学館
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百科事典マイペディアの解説

仮面【かめん】

マスクmask。人間,動物などの顔を模して作った扮装具。祭祀に用いる信仰仮面と,舞踊・演劇などに着用する芸能仮面とに分類できるが,両方の役割をするものも多い。古くから,動物に擬装するための狩猟仮面や,敵を威嚇し頭部を保護するための戦争仮面,あるいは信仰・儀礼と結びついた神,悪霊の仮面などが作られてきたが,芸能仮面の起源は信仰,儀礼に関するものが多い。
→関連項目メーキャップ(演劇)

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とっさの日本語便利帳の解説

仮面

ある大学に在籍しながら、実際は通学せず、翌年の他大学入試の受験勉強をしている事実上の浪人生。首尾よく希望校に受かれば退学、落ちた場合は留年してそのまま残る。

出典|(株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」
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世界大百科事典 第2版の解説

かめん【仮面】


[仮面の出現]
 現代人はさまざまな日常生活の状況に応じて〈仮面=人格〉を使い分けるという比喩的な意味で〈仮面〉ということばがよく用いられる。この〈人格〉の語源ペルソナも,エトルリア地方の死者にかぶせるマスクの呼名に由来するといわれる。しかし,具体的なものとして,儀礼や祭りに用いられる仮面の特徴は,日常生活とは異質な状況の中に〈出現〉してくる点にある。パプア・ニューギニアの諸族の〈精霊〉〈守護霊〉を表す仮面にせよ,アフリカ,リベリアのポロ結社やマリのドゴン族のアワ結社に代表される〈秘密結社〉の組織の核としての仮面にせよ,アマゾン地方のインディオの森にすむ獣の仮面にせよ,仮面は日常世界からは不可視の世界,他界あるいは霊界,人間の領域とは次元を異にする自然界,死者の世界からこの世界へと出現し,突出し,両者を媒介する中で,不可視のものを眼に見える姿で現出するという意味を担っている。

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大辞林 第三版の解説

かめん【仮面】

人間・動物などの顔の形に作り、顔につけるもの。種々の儀礼や演劇に用いる。面。マスク。ペルソナ。
真実を隠すためのみせかけ。 「 -をはぐ」
[句項目]

出典|三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

仮面
かめん

本来は、変装・化身のため顔を覆う造形物のマスクmaskをさすが、顔面につけずに頭の上あるいは胸や腹につけるマスケットmasketteや、着用を目的としない顔的彫刻や造形物のマスコイドmaskoidや、全身を覆うような巨大なマスクをも「仮面」とよぶ。仮面を字の示すとおり解釈すれば「仮の面(顔)」、つまり本来の顔ではない借りものの顔のことであるが、ここに二つの問題がある。
(1)一般的には仮面は木、金属、紙、粘土、動物の皮、貝の組合せ、編んだ靭皮(じんぴ)繊維などでつくられた造形物のことであるが、人間の顔面に色彩を塗り付けメーキャップし、牙(きば)や角(つの)や鳥の羽などをつけて変装・化身した顔を「仮面」とよんでよいかの問題。これは変装・化身を目的としているので、仮面に含めてよい。
(2)剣道の面やフェンシングのマスク、あるいは防虫・防毒・防寒用のマスクのように、顔面を保護するためのマスクを「仮面」とよんでよいかの問題。顔を覆うことにより本来の顔とは違ってくるので広義では「仮面」の要素があるが、変装・化身の目的がないので狭義では除外すべきであろう。甲冑(かっちゅう)には顔面保護の防具をつけたものがあるが、これには防具の要素とともに敵を威嚇するデザインも少なくないので、これらは前述の広義と狭義の中間的存在といえよう。
 人類はなぜ「仮の面」(仮面)を必要としたか。仮面は、旧石器時代に属するラスコーの洞窟(どうくつ)壁画をみてもわかるように、人類文化の原始時代から存在し現在に至っているし、地球上の各地域に多様に存在している。仮面の起源や分類を述べる前に、仮面のもつ本来の機能を考察すると、それは人類の本能に近い変身願望を満たすものである。人類は強大な他の動物に比較すると、肉体的にきわめて非力である。そのうえ、他の動物と違って、死、病気、災禍などを事前に意識して不安になる。また、ありのままの姿ではとうてい満足しないし、できない性格をもつ。いいかえれば、不安で弱い存在の自分を知るとともに、一方そうした自己を超えたいという欲求を強烈にもっている。こうした本質的に矛盾した二重性をなんとか克服するため、人類は仮面を用いた。仮面は、かぶることだけで存在自体の表情を変えることを可能にする。神や祖霊や妖怪(ようかい)などの仮面をかぶれば、人類はそれら超自然的存在になった気になれる。こうした超自然的存在の仮面のほかに、人間や死者や動物などの仮面もつくり、それらを組み合わせれば、この世のあり方も説明できる。その組合せを人類が思い望むようにつくり、模倣呪術(じゅじゅつ)を演劇的に行えば、聖なるものが凶なるものの上に君臨し、招福除災の儀式ができる。したがって、成人式、祖霊祭祀(さいし)、狩猟農耕の豊饒(ほうじょう)の儀式、雨乞(あまご)い、葬祭などに、仮面の果たす役割は大きい。また、仮面をかぶることにより、人は自己であると同時に自分以外の別の存在ともなるので、自己と自己以外のものとの重複がおこり、両者の交流が仮面によって可能になる。
 したがって、仮面の「仮」とは、自己以外の存在のことであり、本来の自己の顔が仮の顔より優先するということではない。能で仮面を「おもて」とよび、古代ギリシア劇で仮面を「ペルソナ」とよぶのは、むしろその反対で、仮の面を人間本来の顔よりも優先させている名称といえよう。少なくとも、仮面をつけている間は、仮面は実際の顔よりも優先される。なぜなら、そのために仮面をつけるのであり、仮面には使用の目的がそれぞれあるからである。さらにこれを一歩進めて考えれば、人間がたとえば神や精霊や妖怪悪魔や祖霊や死霊などの仮面をつけ、それらの存在となり、一般の人々が仮面をつけた人間をそれらの超越的な存在とみなすという図式ができるので、仮面は超越的存在と人間とが霊的に交流する媒体となるもの、といえよう。[深作光貞]

仮面の起源とその機能

仮面の起源にはいろいろな説がある。仮面は主として呪術的宗教的儀礼や祭祀を中心に発達したが、そうした儀礼や祭祀は地域や文化によって多少とも異なるため、起源も一つに絞ることは不可能で、起源説がさまざまなことは仮面の機能の多様さのためであるといえる。大別してどのような仮面があるかをみてみよう。[深作光貞]
死霊の仮面
死者の霊は不滅としても、遺体は腐る。腐らないようにミイラにするには布巻きをする。布巻きをすると、だれのミイラかわからなくなるので、布巻き遺体に仮面をつけ、だれの遺体かを明らかにする。ツタンカーメン王で有名な古代エジプトの王や王族・貴族の黄金の仮面や、古代アンデス文化のミイラの包みの上に置く飾り首の仮面も、このような必要からである。これは生者のためでもあり、死者のためでもある。死霊は超越的能力をもつものとされているので、生者は死者を供養し鎮魂しなければならないし、死霊は自分のすみかである遺体がわからなくなると生者に危害を加えかねないからである。古代エジプトでは霊は心臓に宿ると考えられていたが、世界では霊は頭に宿るとする所が多い。こうした所では、頭蓋(ずがい)骨のみを関心の対象とする傾向が強い。たとえば、アマゾンのムンドゥルク人は、脳や舌や目や歯を取り除き、とろ火で気長に表皮のついた頭蓋骨を乾燥させ、眼窩(がんか)に樹脂や蝋(ろう)を詰め込み、みごとな顔づくりをした。ニューギニアには、遺体が腐り終わったころ墓から頭蓋骨だけを取り出し、粘土で生前の顔に造形し、額や目に貝をちりばめ、毛髪をつけ美しい文様を顔面に施し、一家一族のだいじな祖霊として保存するアブマ人などの風習がある。しかし、メソポタミア、フェニキアをはじめ世界の多くの地で発見される金、銀、銅、テラコッタなどの埋葬用仮面は、死者の顔にかぶせたもので、腐りゆく遺体に対する執着を捨て、造形物の仮面に故人の不変のおもかげを定着させたものである。その仮面が金銀などの材料で威厳のあるシンボリックなものであれば満足した地方もあるが、たとえばアッシリアのように、生前の顔と似ていることを重視した所もある。こうした所では直接に死者の顔から型をとった。ただし、今日でいうデスマスクと違うところは、これを死者の顔でなく生前の顔に仕立て、これをかぶることで死者を生きている存在とみなしていた点である。
 他方、遺体を離れた霊はあの世に行って定住するものとする文化では、この世に執着してなかなかあの世に行こうとしない死霊を遺体から追い出し天界に旅立たせるため、生者たちが恐ろしい形相の仮面をかぶり死霊を脅す風習がある。その代表的なものがアフリカのドゴン人の仮面で、人々は葬儀の間の6日間、死霊を恐れさせるための仮面をつけて、追い出しの踊りを踊り続ける。[深作光貞]
成人式仮面
いままで保護されてきた子供が一定の年齢に達し、これからは共同体の一人前の成員となり共同体を保護する立場に変わる通過儀礼が成人式initiationである。近代社会以前の封建社会あるいは未開社会において、一人前の成員となることは、肉体的、精神的、能力的に一人前であることと同時に、その社会の求める人間となり、その社会の信仰やしきたりに従い、それらを支える者でなければならない。その通過儀礼で、仮面は重要な役割を担う。すなわち、長老たちは威圧的な怪奇な超人間的存在の仮面をかぶり、成年の儀式の少年たちに恐怖を与え、社会への忠誠と服従を誓わせる。成人とは、自分のなかの少年を殺し、大人として生まれ変わることであるから、成人式の試練期間中は幼い精霊の仮面をつけていて、その仮面を取り除く儀式が成人認可の式とする所もある。オセアニアでもアフリカでもアメリカ先住民の世界でも、その社会結成を秘密結社組織にしている部族が少なくなく、そうした社会での成人式は、宗教儀礼と試練訓練を内容とする入門式の性格をもつ。こうした秘密結社の入門には掟(おきて)や信仰が重視されるので、神像的仮面や祖霊の仮面がだいじで、大形の多様でみごとな仮面が用いられる。とくにニュー・アイルランド、ニュー・カレドニア、ニューギニアなどのオセアニアの仮面は、木彫りのほか樹皮張りや編んだ靭皮繊維や籐(とう)などを駆使してダイナミックな美しさを示している。一方、アフリカの仮面は、独特の力強い造形の木彫りで、これまた美術的に優れていて、世界的賞賛の的となっている。[深作光貞]
豊猟・豊饒儀礼の仮面
世界の諸文化には、仮面のある文化とない文化とがある。これを狩猟、牧畜、農耕の次元から眺めると、牧畜文化には仮面はほとんどない。それは、祖霊、神霊などの超越世界との媒体としての供犠(くぎ)に、家畜そのものが使われるので、とくに仮面という媒体を必要としなかったためであろう。狩猟文化には、あまり多くはないが仮面が存在している。仮面の起源説に狩猟起源説があることも事実である。すなわち、狩猟生活を営む原始人たちは擬装して獲物に忍び寄ったので、その擬装が仮面の始まりになったという説、あるいは、殺した獣の霊を慰め、その繁殖と捕獲を祈る呪術儀礼に動物の仮面を用いたという説もある。確かに原始美術の洞窟画にそのような光景がみられる。そして、数は少ないがアフリカなどの部族社会に狩猟仮面が存続している。次に、農耕文化では仮面をしきりに用いる。農耕は、労働の成果以上に天候に左右される。収穫がなければ飢餓につながる。そこで呪術によって天候を自分たちに有利に操作することが重要となり、農耕儀礼が盛んになり、仮面がしきりに使用されたわけである。そのなかでも熱帯多雨地域の農耕民にとくに仮面が多い。その仮面にはアニミズム色が強いことが特徴である。ただし、一般的に仮面そのものは、材料的にも作製技術的にも素朴なものが多い。[深作光貞]
トーテム仮面
トーテミズムとは、ある社会集団が特定の動植物あるいは自然物などとなんらかの特殊な関係にあるとする信仰およびその制度のことである。トーテム集団ではそれらの動植物を自分たちの集団の象徴として占有し、それに関するタブーを厳しく守る。いいかえれば、祖霊信仰のある特殊な形態であり、遠い先祖がどのようにしてその動植物や自然物と結び付いたかを神話で物語っている。動物のトーテムには、ヘビ、タカ、ヒョウが多いが、宗教儀礼でもその結び付きを再現するために仮面が不可欠になる。こうしたトーテムの仮面は、祭り以外のときでもトーテムの霊が宿り強大な呪力をもったものとして、たいせつに保管される。トーテムを象徴する絵画や彫刻あるいはトーテムポールも、人間の祖先とトーテム動植物を結び付けるため顔面が描かれる。こうしたトーテム仮面ではアメリカ・インディアンのものがすばらしく、動物的であって人間的、いわば人間と動物の顔が一つの仮面に組み合わされている。一方、オセアニアのトーテム仮面には、厳しい現実を激しい力で超越したい願望から、奇怪でグロテスクな迫力がある。その点、アフリカのトーテム仮面は、シカ、ピューマ、ヒョウなどを細長く美しく彫っていて様式化された落ち着きをもつ。形も帽子のように頭からかぶる仮面が多い。こうしたアフリカの仮面が、近代美術の創始者たちピカソやマチスやブラックたちに影響を大きく与えていることは承知のとおりである。とくにピカソは、アフリカのトーテム仮面の大胆でナイーブな美しさをもつ造形に興味をもち、自分の制作に取り入れたといえよう。一方クレーやミロは、オセアニアのものに興味を示したことも、よく知られていることである。[深作光貞]
シャーマンの仮面
シベリアから中国、朝鮮、日本などアジア北東部を中心に、アメリカ・インディアン文化にわたって、シャーマニズムが顕著にみられる。すなわち、トランスのような異常心理状態になって、神や精霊や死霊と直接交流し(神がのりうつる)、占い、予言、治病、祭儀などを行うシャーマン(呪術的宗教的職能者)を中心とする宗教形態である。シャーマニズムには、シャーマンが仮面を用いるものと用いないものとがある。かつては用いたが、いまは用いないものもある。たとえば、日本のシャーマンは現在仮面を用いないが、秋田の祭りの「なまはげ」は、かつてのシャーマン的仮面が民俗行事として残ったものではないか、とみなす者もいる。現存するシャーマンの仮面で、もっとも知られているのはエスキモーのそれである。シャーマンは天高く地下深く自由に行動し、善霊にも悪霊にも接し、得た情報で人々の除災を図る。このときシャーマンが顔や姿を悪霊に知られたら、どんな仕返しを受けるかわからない。そこで変装する必要がおこった。樹木も生えない極寒地なので、仮面は獣皮に獣毛を配したものが多く、全身すっぽり覆う獣皮製のものもある。仮面の特徴は、神秘的な雰囲気のなかにも、天高く地下深く自由に行動するような一種の身軽さをもっていることであろう。アメリカ大陸のプエブロ・インディアンのカチナ仮面もよく知られている。カチナとは、創世神話に登場する人物、鳥などの動物、超自然的存在などの神々のことで、踊り手たちは仮面を頭巾(ずきん)のようにすっぽりかぶって踊る。その木彫りが有名なカチナ人形である。乾燥した高原なので、シャーマンの最大の役割は農耕の雨乞いの儀式の主催であり、カチナ仮面も雲や雨の霊、空、大地、星などの神々を表している。[深作光貞]
悪霊払いや治病用仮面
病気をはじめとする災禍は、悪霊の仕業と考える。たとえば病気は悪霊が人体に侵入したことによっておこるものとみなす。したがって、病気を治すこととは人体から悪霊を追い出すことになる。いわゆる未開社会では、治病と悪霊払いは同一のものである。悪霊を追い払うには、それ以上の力で対抗しなければならない。したがって、シャーマンが恐ろしい形相の仮面をつけ、太鼓など打ち鳴らして祈祷(きとう)する風習が珍しくない。こうした仮面ではアフリカのコンゴのキフェベ仮面が造形的に優れている。病気ばかりでなく種々の厄払いの盛んな所の一つが日本で、節分をはじめとして悪鬼・災禍を払う祭り用の鬼などの面が多彩にある。こうした仮面は、家に掛けておくだけで招福除災になるとされ、飾り仮面として世界のあちこちに存在する。
 以上のように、仮面は社会生活の宗教的・呪術的儀礼、人生の通過儀礼で重要視され、祭祀や行事を中心として使用された。[深作光貞]

仮面の本質と構造論的解釈

仮面という語を分解すると、文字どおり仮の面となる。この場合、われわれは本当の顔、すなわち素顔を隠蔽(いんぺい)したにせの顔、変装した顔という解釈をしがちである。しかし哲学の分野では、この矛盾がすでに指摘されている。哲学者、和辻哲郎(わつじてつろう)は、その著書『面とペルソナ』のなかで、劇に用いられる面を意味した「ペルソナ」の語が、劇中における役割、人物を示すようになり、さらに劇から離れて人間生活における役割、地位、身分などにまで意味を転じるようになる歴史を説明している。つまり仮面は、一方で劇中の他の役者や観客との関係のなかで、他方、現実生活に意味を広げれば、他の人々とのかかわりにおいて初めて意味をもつものなのである。いいかえれば、人間は、他者とのかかわりあいに応じて、自分の仮面をもち、別の仮面と取り替えるのである。ある場面では子供の親であったり、別の場面では会社の社員であったりするわけである。役割を離れた、すなわち仮面をもたない人間の存在はない。仮面を人格の面に限定したとしても、仮面を取り去ったあとに素顔があるという考え方は、神を殺し、自我とか主体、アイデンティティの存在を信じたヨーロッパ近代思想に由来するものである。
 しかし、いわゆる未開社会をはじめとする儀礼で、実際に仮面という物体を顔から取り去れば、そこには生きた人間の顔があるわけで、やはり物理的に取り外しのきく仮面と、現代人の生き方から読み取れる、いわば非物質的な仮面とは区別して論じるべきであろう。
 前者については、これまで表現描写、それがもたらす印象、美術的価値、民族誌的機能論も加えて盛んに論じられてきている。仮面のもつ機能についてはすでに詳しく述べられているので、ここでは構造論的解釈に触れておこう。構造主義人類学者と称されるフランスのレビ(レヴィ)・ストロースは、その著書『仮面の道』のなかで、北アメリカ北西海岸に住む先住民であるサリシュと、彼らの北に住むクワキウトルの双方にみられる儀礼用仮面を分析している。サリシュのスワイフウェ仮面は、垂れ下がった舌と突き出た目、白色系の塗彩を特徴にもち、ポトラッチ儀礼で登場する。さらにこの仮面は、神話の世界でつねに富と結び付き、儀礼でもその点が明らかにされる。これに対し、クワキウトルのクウェクウェ仮面は、その名の語源、あるいは造形的観点からみて、同一の起源と表現要素を備えているにもかかわらず、神話や儀礼から読み取れる意味は、富とは正反対の内容を示している。むしろ富と結び付くのは、クワキウトルの冬の儀礼でみられるゾノクワ仮面であって、これはくぼんだ目、すぼめた口、黒色系の装飾をもち、前述の二つの仮面とは造形上対極に位置している。南から北への伝播(でんぱ)経路を想定するレビ・ストロースは、文化が仮面を受容する過程で、造形的特徴が保持される場合は、意味のレベルで逆転がみられ、意味のレベルが保持されれば、造形面での逆転がおこるという結論に達している。仮面と特定の民族の特定の儀礼という場に固定して、そのメッセージを読み取ろうとしがちな分析とは異なり、一つの仮面をつねに他の仮面との対比関係構造内に置いて分析している。これは、神話や儀礼の分析ですでに適用されている手法ではあるが、造形芸術に用い、その形や様式が潜在的にもつ隠れた意味論的秩序を明らかにし、さらにより包括的な宇宙論的レベルにまで迫ろうとした意義は大きい。[関 雄二]

玩具としての仮面

日本では能面、狂言面などの影響を受けて、子供の遊び道具として小形の面が製作され、流行するようになった。玩具面(がんぐめん)が売り出されるようになったのは江戸時代からで、材料には主としてキリ、スギ、ヒノキなどを用いた木彫りのものと、紙の張り子製とがあった。神社寺院の祭礼、縁日などで信仰的な護符(ごふ)として面が授与され、縁起物として売られた。当時の稲荷(いなり)信仰から生まれた初午(はつうま)の狐面(きつねめん)や、神楽(かぐら)、歌舞伎(かぶき)、年中行事、伝説を面玩具化したものなどがある。種類も、おかめ、ひょっとこ、鬼、般若(はんにゃ)、天狗(てんぐ)、動物類と多種多様で、明治期以降は陸海軍人や剣劇俳優などの面が出現した時期もある。木彫り面は大正期から姿を消したが、張り子面は現在も郷土玩具として全国各地にある。厚紙製の目鬘(めかずら)という半面型のものもあり、花見などに用いられ、子供の遊び道具にされた。セルロイド製が大正期から出回った。最近はテレビや漫画の人気者を扱ったマスコミもののビニル製のものがみられる。[斎藤良輔]
『レヴィ・ストロース著、山口昌男他訳『仮面の道』(1977・新潮社) ▽山城祥二編『仮面考』(1982・リブロポート) ▽和辻哲郎著『面とペルソナ』(1937・岩波書店) ▽坂部恵著『仮面の解釈学』(1976・東京大学出版会) ▽泉靖一他編『世界の仮面と神像』(1970・朝日新聞社)』

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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世界大百科事典内の仮面の言及

【演劇】より

…〈演戯者〉は素人か専門技能者か,さらには俳優としてそれを職業とするものか,その組織のされ方,社会的身分はどういうものか,またその演戯はどのような要素(言葉,身ぶり,歌,踊り等)をもち,どのような様式に従い,どのような訓練を必要とするものか。〈劇場〉は仮設か常設か,社会のどのような空間に位置し,社会生活のどのような時間に機能するのか,劇場内部の舞台と客席の関係はどのような構造か,舞台形象の構成要素はどのようなもので何が優先するか(装置,仕掛け,照明,衣装,仮面,化粧等。それと演戯との関係),劇場の組織・興行形態はどのようなものか(有料か無料か,観客動員の仕方,補助金等)。…

【仮面劇】より

…イタリアのコメディア・デラルテ,日本の能,ギリシア悲劇等,確立した劇のジャンルとして存在するもの以外にも,仮面劇の裾野は世界各地の伝統演劇,民衆演劇の中に広がり,また仮面と変装を伴う儀礼と交錯している。仮面そのものが日常世界への非日常的存在の出現であり,その起源を語る神話と結びついて劇的な構造を内包しているのである。…

【ドゴン族】より

…そして数個の村が集まって一つの地域共同体を形成し,ホゴンと称する政治的・宗教的権威を帯びた首長をいただいている。この首長のもとに仮面結社や年齢集団の組織が確立されている。 ドゴン族は,その特有な仮面を用いた踊りでつとに知られている。…

【メラネシア人】より

…政治的な機能をももち得た秘密結社が海岸地方で見られたが,とりわけバンクス諸島で発達した。儀礼に伴って仮面が発達しており,超自然的なものをあらわす特定の人間によって身につけられる。 低地では造形芸術や写実的な芸術が非常に進んでおり,今では博物館の収集品の対象になっている。…

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