日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒサマツミドリシジミ」の意味・わかりやすい解説
ヒサマツミドリシジミ
ひさまつみどりしじみ / 久松緑小灰蝶
[学] Chrysozephyrus hisamatsusanus
昆虫綱鱗翅(りんし)目シジミチョウ科に属するチョウ。本州、四国、九州の山地から低山地に分布し、日本の特産種。本州における分布の東限は、太平洋側では神奈川県足柄上(あしがらかみ)郡、日本海側では新潟県西頸城(にしくびき)郡。和名のヒサマツミドリシジミは最初に発見された鳥取市久松(きゅうしょう)山に基づくもので、「ヒサマツ」はキュウショウの読み替え。はねの開張は34ミリメートル内外。雄の翅表は金属様黄緑色、雌の翅表は黒褐色、前翅基半に紫色斑(はん)と中央部に小さい橙(とう)色斑がある。裏面の斑紋に著しい特徴があり、とくに後翅裏面白帯の後端がV字状をなすこと、そのほかの特徴によって近似種から容易に見分けられる。年1回の発生、6、7月から出現するが、雌は10月まで生き残り、秋に産卵する。卵態で冬を越し、翌春食樹の芽立ちと同時に卵はかえる。幼虫のおもな食樹は、ブナ科のウラジロガシ、アカガシ、ときにツクバネガシ、イチイガシ、コナラからも卵が発見される。
[白水 隆]