日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒトクチタケ」の意味・わかりやすい解説
ヒトクチタケ
ひとくちたけ / 一口茸
[学] Cryptoporus volvatus (Pk.) Hubb.
担子菌類、サルノコシカケ目サルノコシカケ科のキノコ。マツが枯れるといち早く発生するキノコで、クリの実状またはハマグリ状をしている。幅2~4センチメートル、厚さ1~2センチメートル。表面は黄茶色ないし栗(くり)色で、ニスのような光沢と粘り気を帯びる。肉は白くコルク質。下面は革質のやや厚手の膜で覆われており、管孔(くだあな)を露出しないが、胞子が成熟するころになると傘の根元の近くに楕円(だえん)形の口が開く。口は径3~6ミリメートル、管孔は長さ2~5ミリメートルで白ないし汚黄色、管口は微細である。胞子は長楕円形で、10~13マイクロメートル×4~6マイクロメートル。キノコが生(なま)のときは干し魚に似たにおいを放ち、昆虫を引き寄せる。マツ類の枯死に関係がある穿孔(せんこう)虫の脱出口からキノコが発生することから、虫と菌の間に生態的関係があると考えられる。分布は、日本のほか、中国、朝鮮半島などのアジア極東地域と北アメリカに限られる。
[今関六也]