改訂新版 世界大百科事典 「ヒメアリ」の意味・わかりやすい解説
ヒメアリ (姫蟻)
Monomorium nipponense
膜翅目アリ科の昆虫。働きアリの体長1.5~2mm,淡黄褐色で腹部のみ黒褐色,全体に光沢があり腹柄は2節。本州,四国,九州に分布する。日当りのよい場所の枯草の茎や腐朽した木材の中などに巣をつくり,ときには屋内に侵入して食品を加害したり,人の皮膚の柔らかい部分を刺すことがある。本種に似たイエヒメアリM.pharaonis(英名Pharaoh's ant)は体長1.9~2.5mm,黄褐色で腹部の先端はやや暗色,頭胸および腹柄には微小な点刻が密布し光沢がない。熱帯アフリカの原産で,交易に伴って全世界に広がっている。温帯以北では病院,ホテル,集合住宅のような冬季に暖房を行う大型建造物内に生息し,やや薄暗いところで活動する。雑食性で食品を加害するほか,衣類などに穴を開けることがある。巣は壁面のひび割れのような狭い隙間の奥につくられるので,有効な駆除法は知られていない。日本では現在,大都市の一部にのみ発見される。
執筆者:久保田 政雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報