改訂新版 世界大百科事典 「ヒュペルボレオイ」の意味・わかりやすい解説
ヒュペルボレオイ
Hyperboreoi
ギリシア伝説で,篤(あつ)くアポロンを崇拝する〈極北人〉。北風(ボレアスBoreas)のかなた(ヒュペルhyper)の四時光明に輝く国で至福の生を送っていると考えられた。前5世紀の歴史家ヘロドトスがアポロン誕生の聖地デロス島の住民の話として伝えるところによれば,かつてヒュペルボレオイは2人の乙女にアポロンへの供物を持たせてデロス島へ送り出したが,乙女たちが帰国しなかったため,以後は麦わらに包んだ供物を国境まで運んで隣国人に渡し,それをまた次の隣国人に転送してくれるようにと頼んだ。こうして供物は次から次へと転送されてアドリア海岸に達し,ついでギリシアのエペイロス地方からマリス湾,海を渡ってエウボイア島,最後にテノス島を経てデロス島に着いたという。ここに記された供物の旅は,ヨーロッパではバルト海にしか産しない琥珀が青銅器時代のギリシア世界にもたらされたときの交易路,いわゆる〈琥珀の道〉の記憶をとどめるものであろうと考えられている。
執筆者:水谷 智洋
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