ヒラエオサウルス(読み)ひらえおさうるす(その他表記)hylaeosaur

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒラエオサウルス」の意味・わかりやすい解説

ヒラエオサウルス
ひらえおさうるす
hylaeosaur
[学] Hylaeosaurus armatus

鳥盤目装盾(そうじゅん)類(亜目)エウリポッド類よろい竜類(下目)に属する恐竜。イギリスの白亜紀前期、約1億4285万年~1億3640万年前の地層から産出した全長約4メートルの草食恐竜。世界で3番目に記載された恐竜で、メガロサウルスMegalosaurusやイグアノドンIguanodonとともに恐竜の概念を構成するうえで役だった。最初に発見されたのが1820年代で、イングランド南部サセックス地方であった。1833年になって古生物学の先駆者ギデオン・マンテルGideon A. Mantell(1790―1852)により命名された。化石は前半身のみで、頭骨後部から肩部と前肢までしかない。大きなスパイク突起)や小さめの骨の鋲(びょう)が含まれていることから、頸(くび)や肩から水平ないし、やや上向きにスパイクが突き出していたと考えられる。その間に楕円(だえん)形や円形の8センチメートルほどの骨の鋲が散らばっていた。ヒラエオサウルスの後半身は近縁と思われるポラカントゥスPolacanthusから類推されている。実際のところヒラエオサウルスとポラカントゥスは同じ動物と判断する学者もいるほどである。ただし、知られているポラカントゥスの化石は白亜紀前期、約1億3000万年~1億2500万年前の地層ながら時代的に若干のずれがある。ポラカントゥスの化石は後半身しか発見されていないが、骨格のほか大きなスパイクや骨板、腰部装甲を含む。腰の装甲は骨の鋲がびっしりとモザイク状に集まり融合し、盾のように骨盤の背側を保護していた。尾の上には三角形の骨板が対をなして並んでいた。スパイクの間には小さな骨の鋲が散らばっていた。これらは皮膚上にあるので、皮膚とともに動いたらしい。ジュラ紀後期のミモオラペルタMymoorapelta(1994)などとともに、科は不明とされている。

[小畠郁生]

『デニス・R・ディーン著、月川和雄訳『恐竜を発見した男――ギデオン・マンテル伝』(2000・河出書房新社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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