日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒラタハバチ」の意味・わかりやすい解説
ヒラタハバチ
ひらたはばち / 扁葉蜂
webspinning sawfly
昆虫綱膜翅(まくし)目広腰亜目ヒラタハバチ科Pamphiliidaeの総称。名のように扁平(へんぺい)な体をもち、触角は長く糸状で、比較的複雑な翅脈をもつ。体長7~15ミリメートル。幼虫も扁平な体で、腹脚がなく、触角は長く7節で、尾端に3節からなる尾肢をもつ。そのはい方は変わっていて、頭を左右に振り、口から出した糸を梯子(はしご)状に張り、その下をくぐるようにして背面で歩く。針葉樹を食うグループと、広葉樹を食うグループとに分かれ、前者のトウヒ類を食うオオアカズヒラタハバチCephalcia isshikiiや、カラマツを食うカラマツヒラタハバチC. koebeleiがしばしば大発生し大害を与える。幼虫には集合性のあるものと単独生活のものとがあり、広葉樹を食うものは巻いた葉中にすむ。老熟すると吐糸をやめ、土中深く30センチメートルくらい潜り、前蛹態(ぜんようたい)で越冬する。すべて1世代1年かかる。世界に約180種が知られ、北半球に分布する。日本には5属約60種が産する。
[奥谷禎一]