日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビエドゥー」の意味・わかりやすい解説
ビエドゥー
びえどぅー
François Billetdoux
(1927―1991)
フランスの劇作家。まず作詩家兼ラジオ作家となり、やがて演劇界に進出。『乾杯(チンチン)』(1959)で既婚の男女の奇妙な恋を詩的に描いて成功する。『テルペの処(ところ)へ行け』(1961)では共産主義国で愛の自由を実践する女を描き、『地球は元気かね?――回っとりまさあ、旦那(だんな)』(1964)では米仏の脱走兵2人の放浪を描く。祖母が家族関係をかき乱す『雲の中を通るべし』(1964)は1988年にも再演された。1人の人間がみるみるうちに年老いていく幻想的な晩年の喜劇『目覚めよ、フィラデルフィ』(1981~88)では、通常の作劇術は破壊されている。総じて風刺性に富み現代社会の諸問題を実験的な手法で詩的に描いた。
『岩瀬孝訳『テルペの処へ行け』(『今日のフランス演劇 第2巻』所収・1966・白水社)』